退職代行サービスは違法?弁護士法違反・拒否・損害賠償のリスクを解説

スーツ姿のビジネスパーソンがスマートフォンで退職代行業者に連絡している様子、背景に法律書やバランスの象徴 未分類

「退職代行サービスは違法ではないのか」――結論から言えば、退職代行サービスそのものは違法ではない。

ただし業者が「退職の意思を伝える」という範囲を超えて交渉や斡旋に踏み込めば、弁護士法72条が禁じる非弁行為に該当し、違法となる可能性がある。

これが、この問題の核心である。

昨今、退職代行サービスは急速に一般化した。上司に直接「辞めます」と言い出せない人、ハラハラなどで会社との接触自体を避けたい人にとって、これほど心強い味方はいないだろう。

だが2025年10月22日、退職代行大手「モームリ」を運営する株式会社アルバトロス(東京都品川区)が、弁護士法違反の疑いで警視庁の家宅捜索を受けたと報じられた。

そして2026年8月28日には、この事件の判決が言い渡される予定だ。まさに今、決着の局面を迎えている。

私、神崎慎一郎は長年、多様な働き方や企業構造を独自に研究してきた者として、この問題を感情論ではなく、法律の条文と実際の判例・報道事実に基づいてフラットに整理していきたい。

なお私自身は弁護士資格を持たない一コラムニストであり、法的な最終判断は必ず専門家に確認してほしい。本稿では堤法律事務所の中谷真一郎弁護士による監修記事など、複数の専門家解説も参照しながら事実関係を検証している。

あなたが安心して次の一歩を踏み出せるように、力を尽くそう。

そもそも「非弁行為」とは?弁護士法72条が定める境界線

まず押さえておきたいのが「非弁行為」という言葉の意味だ。

非弁行為とは、弁護士資格を持たない者が、報酬を得る目的で、業として「法律事務」を取り扱うことを指す。

弁護士法72条は、これを明確に禁止している。

ここでいう「法律事務」には、訴訟、示談交渉、和解、代理といった行為のほか、依頼者を弁護士に紹介して紹介料を受け取る「周旋(斡旋)」行為も含まれる。

つまり、お金をもらって他人の代わりに法的な交渉ごとを行うことはもちろん、法律問題を弁護士に取り次ぐだけでも、報酬を伴えば違法となり得るということだ。

もしこの規定に違反すれば、弁護士法77条により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金という、決して軽くない刑事罰の対象となる。

これは違反した業者本人だけでなく、業者と提携して依頼者を受け入れた弁護士側にも及ぶ規定だ(同条1号・3号)。

私はここに、この問題の本質が凝縮されていると感じる。退職代行は「便利なサービス」である以前に、「法律事務」との境界線上に立つ、極めてデリケートな業態なのだ。


退職代行が合法でいられる範囲とは?「使者」としての意思伝達なら問題なし

では、退職代行サービスのどこまでが合法なのか。

答えはシンプルだ。「本人に代わって、退職する意思を会社に伝える」という行為そのものは、弁護士資格がなくても行える。

これは法律上「使者」としての行為とされる。

使者とは、本人がすでに決めている意思をそのまま相手に伝達するだけの立場であり、自分の判断で交渉内容を決める「代理人」とは根本的に異なる。

民法627条により、期間の定めのない雇用契約であれば、労働者はいつでも退職を申し入れることができ、申し入れから2週間が経過すれば契約は終了する。会社の承諾は不要だ。

つまり、「〇月〇日付で退職します」とだけ伝えるのであれば、それは単なる伝言に過ぎず、非弁行為にはあたらない。

過去の裁判例でも、退職条件の交渉を行わないことを条件に、退職代行会社の行為が弁護士法72条には違反しないという判断が示されたことがある。

多くの民間の退職代行業者は、この「使者」としての立場に徹することで、合法的にサービスを提供してきた。


どこからが違法?非弁行為に該当する具体的なケース

問題は、業者が「伝言」の範囲を超えたときに起きる。

※画像はAIによるイメージ

弁護士会の相談事例集などでは、次のようなケースが非弁行為にあたると指摘されている。

1つ目は、未払いの残業代について、業者が「法律に違反する」「計算するとこの金額になる」などと会社側に説明し、話し合いの結果として支払いが実現したケースだ。業者が本人に代わって法律的な問題を交渉している以上、非弁行為に該当するとされる。

2つ目は、ハラスメントの慰謝料請求をめぐり、業者が提携する第三者に交渉を「取り次いだ」ケースだ。報酬を受け取ったうえで法律問題の処理を他者へ斡旋する行為もまた非弁行為にあたる。

その他、実務上とくにリスクが高いとされるのは次のような行為である。

  • 有給休暇の消化日数や取得条件についての交渉
  • 未払い残業代・退職金の金額を算定し請求する行為
  • 退職日そのものの調整・交渉
  • 損害賠償請求やハラスメントをめぐる示談交渉
  • 依頼者を弁護士に紹介し、その対価として紹介料を受け取る行為

これらはすべて「法律事務」にあたり、弁護士資格のない業者が行えば弁護士法違反となる可能性が高い。

会社側から「和解したい」という申し出があった場合も、その言葉をそのまま伝えるだけなら合法とされる余地があるが、和解の条件そのものを詰めていけば、それは交渉であり違法性を帯びてくる。


「モームリ」家宅捜索から判決期日までの全記録(2025年10月〜2026年8月)

抽象的な法律論だけでは実感が湧きにくいかもしれない。だが、この問題はすでに現実の刑事事件として決着の局面に入っている。ここでは事実関係を時系列で、報道各社の情報をもとに整理する。

2025年10月22日午前、警視庁保安課は、依頼者を報酬目的で弁護士に紹介した疑いがあるとして、退職代行「モームリ」を運営するアルバトロス(東京都品川区)本社などを弁護士法違反容疑で家宅捜索したと、時事通信および日本経済新聞が報じた。同時に、あっせんを受けたとされる都内の弁護士事務所も捜索対象となった。

家宅捜索を受けたアルバトロスは同月24日、当時の顧問弁護士との契約を解除し、役員体制を見直すとコメントを発表したと、ITmedia ビジネスオンラインが伝えている。

そして2026年2月3日、警視庁は当時の代表取締役だった谷本慎二氏と、同社執行役員で妻の志織氏を弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕したと時事通信が報じた。逮捕容疑の対象は、2024年7月から10月ごろにかけて弁護士資格がないのに公務員や会社員6人を弁護士に紹介したという内容だったという。

同月24日、東京地検は両容疑者と法人としてのアルバトロスを弁護士法違反罪で起訴し、あわせて提携先だった弁護士法人「オーシャン」の梶田潤弁護士と「みやび」の佐藤秀樹弁護士、両法人も同法違反罪で在宅起訴したと時事通信が報じている。

ここで筆者として注目したいのは、起訴状の内容だ。起訴された事実は逮捕時の「6人」よりもはるかに大きく、2023年6月から2025年2月ごろまでの間に、報酬目的で計174人を弁護士2人に紹介したとされる規模にまで広がっていたと報じられている。

紹介料は利用者1人あたり1万6500円だったとされ、その受け渡しはウェブ広告の業務委託費や労働組合への賛助金といった名目に偽装されていた疑いがあると時事通信は伝えている。

このように、当初の家宅捜索・逮捕段階で見えていた事案の輪郭と、実際に起訴された事案の規模には大きな開きがあった。これは今回の一件を理解するうえで見落とされがちな、しかし非常に重要なポイントだと私は考えている。

その後2026年4月23日、アルバトロスは代表者を刷新したうえで新体制での営業再開を発表したと報じられている。

2026年5月26日、東京地裁で初公判が開かれ、谷本慎二被告・志織被告および法人としてのアルバトロスは、いずれも起訴内容を認めたと時事通信・ライブドアニュースが伝えている。検察側は冒頭陳述で、顧問契約を結んでいた弁護士法人側からの提案を受けて紹介料の受け取りに合意した経緯を指摘したという。

さらに2026年6月5日の公判では、検察側が谷本被告に懲役2年、志織被告に懲役1年6月、法人には罰金200万円を求刑し、弁論が結審したと時事通信が報じている。判決期日は2026年8月28日と設定されている。

最終意見陳述で谷本被告は「退職代行という注目度の高い業態で罪を犯し反省している」、志織被告は「理解が不十分なまま進め、多くの人を巻き込んだ」と述べたと報じられている。

なお、これらの逮捕・起訴に関する事実はいずれも報道時点での「容疑」「起訴内容」であり、判決が確定するまでは推定無罪の原則が適用される点も付け加えておきたい。


会社は退職代行の申し出を拒否できるのか?

読者の多くが気になるであろう疑問がこれだ。「会社が退職代行からの連絡を無視したり、拒否したりすることはできるのか」。

結論として、会社は従業員の退職そのものを拒否することはできない。

労働者には憲法22条1項が保障する「職業選択の自由」に根差した退職の自由があり、無期雇用契約であれば、退職の意思表示が会社に到達してから2週間が経過することで、法律上、退職の効力が生じる(民法627条1項)。

これは会社の意向とは無関係に発生する法的な効果であり、就業規則に「退職代行の利用は認めない」などと定めてあったとしても、その規定自体が無効と解されるのが一般的な考え方だ。

ただし、会社側が退職代行業者からの連絡に対して慎重になること自体は不自然ではない。

本当に本人からの正式な依頼なのか、なりすましや嫌がらせの可能性はないかを確認するため、委任状や本人確認書類の提出を求めるといった対応は、実務上よく行われている。

また、業者が民間企業(非弁護士・非労働組合)である場合、会社側は有給消化や退職金といった条件面の要求には応じる法的義務がないという点も重要だ。

交渉権を持たない業者からの金銭的な要求には、会社は毅然と「本人または弁護士から連絡を」と伝えることができる。

一方で、退職代行を利用したこと自体を理由に、会社が労働者へ損害賠償を請求することは基本的に困難とされる。労働者には退職の自由があり、単に退職代行を使ったという事実だけでは、法的な損害の発生を立証するのが極めて難しいからだ。

例外として、引き継ぎを一切行わずに退職した場合には、信義則上の義務違反として損害賠償請求が認められる可能性があるとされ、実際にそうした裁判例も存在する。ただし「不十分な引き継ぎ」程度では請求が認められにくく、損害額の算定や因果関係の立証には大きなハードルがあるとされる。


【比較表】弁護士・労働組合・民間業者、対応できる範囲はここが違う

退職代行の運営主体によって、法的にできることは大きく異なる。ここを理解しておくことが、業者選びの最大のポイントになる。

結論を先に言えば、条件交渉が絡む可能性があるなら弁護士か労働組合、伝言だけで済むシンプルなケースなら民間業者でも役割を果たせる。

運営主体退職意思の伝達有給・退職日の交渉未払い賃金・残業代請求損害賠償・示談交渉
弁護士
労働組合(ユニオン)○(団体交渉権に基づく)△(範囲に限りあり)
民間企業×(非弁行為のリスク)×(非弁行為のリスク)×(非弁行為のリスク)
※画像はAIによるイメージ

弁護士は法律上の代理権を持つため、退職の意思伝達はもちろん、有給消化の交渉、未払い残業代の請求、損害賠償への対応まで一貫して任せられる。

労働組合は労働組合法に基づく団体交渉権を持つため、給与や退職金についての交渉も可能とされる。会社側は正当な理由なく団体交渉を拒否すると不当労働行為とみなされるリスクがある。

これに対し民間企業は、あくまで「使者」としての意思伝達に徹する必要があり、金銭が絡む交渉や、弁護士への紹介・斡旋に踏み込めば非弁行為のリスクが一気に高まる。今回のモームリの事案は、まさにこの一線を越えたと指摘された結果だといえる。

料金相場については、あくまで筆者が調べた目安として、民間企業は2万円前後、労働組合運営は2万5000円〜3万円程度、弁護士運営は5万円前後からとされるケースが多いようだ。各社の料金・キャンペーンは変動するため、必ず公式サイトで最新情報を確認してほしい。


合法な退職代行業者を見分けるチェックポイント

では、実際に退職代行を利用したいと考えたとき、どのような業者を選べば安心なのか。

顧問弁護士の実在を確認する

弁護士には所属弁護士会と登録番号がある。日本弁護士連合会の検索サービスなどを使えば、実在の弁護士かどうかを確認できる。

「弁護士監修」という表記だけを鵜呑みにせず、実際に弁護士本人が対応するのか、単にアドバイスを受けている程度なのかを見極めたい。

業務範囲が明確に説明されているか

「退職の意思を伝えるのみで、条件交渉は一切行わない」と契約書等で明示している業者は、法的な線引きを理解している証拠と言える。

なりすましや嘘の理由を伝えないか

本人以外になりすます、事実と異なる退職理由を会社に伝えるといった行為をする業者は、非弁行為以前に信用性そのものに問題がある。

「交渉もできますよ」「弁護士を紹介します」と持ちかけてこないか

依頼者側から言い出していないのに、業者の方から有給消化や残業代請求の交渉、あるいは弁護士への紹介を持ちかけてくる場合は、モームリの一件が示したような非弁提携リスクを抱えた業者である可能性がある。

これらの基準に照らして、少しでも不安を感じるなら、最初から弁護士または労働組合が運営するサービスを選ぶのが最も確実な選択だと言える。


考察:モームリ事件は退職代行業界に何をもたらすのか

ここからは、筆者としての率直な見解を述べたい。

私は、退職代行というサービスそのものを否定するつもりは毛頭ない。むしろ、これは時代が求めて生まれた、必然のサービスだと考えている。

しかし今回の一連の経緯を追って、私は3つのポイントに注目している。

第一に、事件の規模が捜査の進展とともに拡大した点だ。家宅捜索の段階では見えていなかった「174人・2023年6月〜2025年2月」という起訴内容の広がりは、非弁行為が単発の逸脱ではなく、組織的・継続的な仕組みとして運用されていた可能性を示している。私見だが、これは業界に対して「バレなければ続けられる」という甘い認識への強い警鐘になったはずだ。

第二に、紹介料の授受が「広告委託費」や「労働組合の賛助金」といった名目に偽装されていたとされる点は、非弁行為が単なる法解釈の曖昧さの問題ではなく、意図的な隠蔽を伴いうるリスクであることを浮き彫りにした。利用者側からは業者の内部の金銭のやり取りまで見抜くことはできない以上、契約前の見極めがいかに重要かを、この一件は物語っていると筆者としては受け止めている。

第三に、2026年5月の初公判で被告側が起訴内容を認め、6月の公判で懲役2年・懲役1年6月・罰金200万円という具体的な求刑がなされたことは、非弁提携という行為に対して刑事司法が明確に厳しい姿勢で臨んでいることを示している。8月28日の判決がどのような内容になるかによって、他の業者への波及的な影響の大きさも変わってくるだろうと私は見ている。

急拡大したビジネスには、必ず淘汰の波が来る。今回の一件をきっかけに、利用者側が「誰が運営しているのか」「どこまで対応してもらえるのか」「弁護士へ丸投げしていないか」を意識するようになったとすれば、それは市場全体の健全化につながるはずだ。

筆者としては、退職の意思を伝えるだけで十分なシンプルなケースであれば、民間業者でも十分に役割を果たせると考えている。一方で、未払い残業代や退職金、ハラスメントへの損害賠償など、少しでも金銭的な交渉が絡む可能性があるなら、迷わず弁護士か労働組合に相談すべきだというのが私の結論だ。

数万円の費用差を惜しんで非弁リスクのある業者に依頼した結果、本来受け取れるはずだった数十万円、数百万円の権利を失っては本末転倒である。


まとめ

退職代行サービス自体は違法ではなく、「退職の意思を伝えるだけ」の行為は弁護士資格がなくても合法だ。

しかし、有給消化や退職金などの条件交渉、あるいは弁護士への紹介・斡旋に踏み込めば、弁護士法が禁じる非弁行為に該当するリスクが生じる。

2025年10月22日、退職代行大手「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスが警視庁の家宅捜索を受け、2026年2月に元代表者夫妻が逮捕・起訴された。起訴内容は174人規模の紹介にまで及んでいたとされ、2026年5月の初公判で起訴内容が認められ、6月には懲役刑の求刑がなされている。判決は2026年8月28日に言い渡される予定だ。

会社側は従業員の退職そのものを拒否することはできないが、民間業者からの金銭的な要求に応じる義務はない。損害賠償が認められるケースも限定的だ。

自分の状況に少しでも交渉が必要な要素があるなら、弁護士や労働組合が運営する退職代行を選ぶことが、後悔しない一歩になるだろう。


よくある質問

退職代行サービスを使うこと自体は違法ですか?

いいえ、違法ではありません。「退職の意思を会社に伝える」という行為は使者としての伝言にあたり、弁護士資格がなくても行うことができます。

モームリの家宅捜索・逮捕は何が問題だったのですか?

報道によれば、報酬を得る目的で依頼者を弁護士に紹介したことが弁護士法違反(非弁提携)にあたるとされ、起訴内容は2023年6月から2025年2月ごろまでの174人分の紹介に及んでいたとされています。判決は2026年8月28日に予定されています。

会社は退職代行からの連絡を無視・拒否できますか?

退職そのものを拒否することはできません。民法627条により、意思表示から2週間で退職の効力が生じます。ただし、条件交渉には応じる義務がない場合があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました