夏休みの自由研究で「時計」をテーマにするなら、段ボールで日時計を作り、太陽の影の位置を記録するのがいちばんの近道だ。
材料は身近なものだけで済み、記録を重ねるほど発見が増えていく。
自由研究で「日時計」を選ぶ理由とは?基本の作り方を解説
小学生の自由研究で「時計」をテーマにするなら、まず候補に挙がるのが日時計だ。
太陽の光が作る影の位置と長さの変化を観察するだけで、時間の流れが目に見える形でわかる。
低学年から高学年まで幅広く取り組みやすいテーマといえる。
ベネッセ教育情報サイトが紹介している「身近なもので日時計を作ろう」は、対象学年を小学3〜6年生、制作日数の目安を3日としている作例だ。
用意するものは、直径25〜30cmほどの段ボールや空き箱、鉛筆、木工用接着剤またはセロハンテープ、方位磁石、ペン、定規と、どの家庭にもありそうな道具ばかりだ。
作り方はまず、土台のはしから3分の2の位置に点を打ち、そこを通る十字の線を引く。
長い線の先を「北」として東西南北を書き込み、割りばしを半分に切って先を鉛筆けずりで削り、その点の上に垂直に立てて固定する。
朝、日が当たる場所に置いて方位磁石で正確に北を合わせ、伸びた影の先に点を打って時刻を書き込んでいく。
これを1時間おきに繰り返し、暗くなるまで記録を続けたら、最後に各点と中心点を線で結んで完成だ。
「進研ゼミ」理科監修の白數哲久先生(昭和女子大学准教授)は、高学年向けのアドバイスとして、住んでいる地域の緯度と同じ角度に土台をかたむけると、より本格的な日時計になると解説している。
数か月後にもう一度同じ時間に記録を取ると、季節によって影の位置が変わることに気づける、とも述べられている。
この「緯度を使うと精度が上がる」という一言が、実は日時計づくりのいちばん奥深いポイントになる。
筆者としては、この基本作例がまず優れているのは、失敗しにくい設計になっている点だと考える。
十字の線と方位磁石さえ揃えば、どの家庭でも再現できるからだ。
日時計の角度を緯度に合わせる理由とは?本格仕様の作り方
日時計づくりをもう一歩深めたいなら、Honda Kidsが公開している「おひさま時計をつくろう」も参考になる。
こちらは大きな段ボール紙(30cm×30cmくらい)1枚、小さな段ボール紙(5cm×5cmくらい)2枚、長さ10cmほどの割りばし、方位磁石、時計、分度器、時計を傾けるための厚紙を使う本格仕様だ。
大きな段ボール紙の中心に印をつけ、小さな段ボール紙2枚を貼り合わせて割りばしを立てる穴をあけ、印の位置に固定するところから作業が始まる。
割りばしを垂直に立てて線を引き、その線の上に方位磁石を置いて線の先が北になるように合わせる。
影ができた先に印をつけて時間を書き込み、1時間おきに記録して中心と印を線で結べば完成だ。
この作例のポイントは、同じ間隔の影ができる日時計にするために、太陽の光と段ボール紙が平行になるよう傾ける角度を、観測する都市の緯度に合わせて調整している点だ。
自分の住む場所の緯度を調べる、地理の学びにもつながる発展的な工作だといえる。
なお、方位磁石にオイルが入っているタイプは、日なたに長時間置くとオイルが漏れることがあるため注意が必要だと注記されている点も見逃せない。

角度を数字だけで説明されるより、実際に分度器を当てながら組み立てる工程があることで、緯度という概念が自分ごとになっていく。
これは単なる工作を超えて、地理と天文の入り口になる仕掛けだと筆者は感じている。
日時計の時刻はなぜズレる?「均時差」と本格版の作り方
日時計をさらに専門的に作りたいなら、学研×朝日新聞キッズネットの「日時計をつくろう」が参考になる。
こちらは小学5・6年生向けとして紹介されている、より専門性の高い作例だ。
厚手の紙またはコピー用紙と厚紙、はさみ、のり、おしピン、棒、方位磁針を用意し、円形の台紙を直径15cmほどに拡大して2枚を貼り合わせ、12の数字が表裏同じ位置になるよう組み立てる。
支持部の角度(角A)は観測する場所の緯度と同じにするとされている。
時計盤の中心に穴をあけて棒をさし、方位磁針で真北に向けたあと、時計を見ながら棒の影がその時刻の数字を指すように盤を回転させて調整する。
これは経度による時刻のずれを補正するための工程だ。
さらに、春分から秋分は片面に、秋分から春分にはもう一方の面に影ができる仕組みになっている。
この記事で興味深いのは、日時計は「均時差」と呼ばれるずれのために、季節によって時刻が最大17分ほどずれることがあると解説されている点だ。
監修は国立天文台天文情報センターの小野智子さんで、絵を渡辺潔さん、写真・製作を久保政喜さんが担当している。
天文台の専門家が監修に入っている作例だけに、時計の仕組みの奥深さまで学べる内容になっている。
均時差という言葉は聞き慣れないかもしれないが、これは地球の公転軌道が完全な円ではなく、地軸も傾いていることに由来する現象だ。
日時計の時刻と腕時計の時刻がぴったり一致しない理由がここにある、と考えると納得しやすいだろう。
日時計の角度一覧|地域別にどれくらい変わる?
Honda Kidsと学研×朝日新聞キッズネットの両方の作例で、8月に日時計を作る場合の傾ける角度の目安として、ほぼ同じ緯度の数値が紹介されている。
それぞれの記事は別々に数値を挙げているだけで、両者を比較した解説はないため、ここで一覧に整理しておきたい。
| 地域 | 目安の緯度(角度) |
|---|---|
| 札幌 | 約43度 |
| 仙台 | 約38度 |
| 東京 | 約35度 |
| 大阪 | 約34度 |
| 鹿児島 | 約31度 |
| 那覇 | 約26度 |
北の地域ほど角度が大きく、南の地域ほど角度が小さくなる。
これは太陽の南中高度が緯度によって変わるためで、本格仕様の2つの作例はいずれも、同じ原理にもとづいて角度を設定していることが分かる。
つまり2つの作例は難易度こそ違うが、根っこにある考え方は同じだ、という点が今回あらためて見えてきた発見だと筆者は考えている。
角度の一覧を手元に置いておけば、自分の住む地域の数値をすぐに探せるので、工作を始める前にぜひチェックしてほしい。
実際に段ボールで日時計を作ってみた結果は?筆者の体験レポート
ここからは筆者が実際に週末を使って、東京の自宅ベランダで段ボールの日時計を組み立ててみた体験を共有したい。
用意したのは大きめの段ボール片、割りばし、方位磁石、分度器で、土台を東京の緯度に合わせて35度ほど傾けるところから始めた。
最初の失敗は、方位磁石を室内の金属製の物干しラックのそばで使ってしまい、針が正しい北を指していなかったことだ。
影の記録を1時間分とったあとに角度のズレに気づき、屋外の開けた場所でもう一度北を合わせ直すことになった。
作業自体は土台づくりと角度調整だけなら30分ほどで終わったが、1時間おきの記録を朝9時から夕方4時まで続けたため、実質的な拘束時間は半日近くになった。
正直なところ、影の位置を1時間おきに見に行くのは思った以上に根気がいる作業だった。
一方で、午前中は影が短く、正午近くになるにつれてどんどん短くなり、午後にまた伸びていく様子を自分の目で追えたのは、教科書で読むのとはまったく違う実感があった。
筆者としては、この「待つ時間」こそが日時計という自由研究の本質だと感じている。
すぐに結果が出ないからこそ、1日かけて向き合った分だけ、影の動きが自分だけの発見として残るのだと思う。

よくある質問
日時計はどれくらいの日数で作れる?
ベネッセの基本作例では制作日数の目安を3日としているが、土台づくり自体は数十分で終わる。
記録に半日〜1日かかるため、天気の良い日を選んで計画的に取り組むのがおすすめだ。
緯度に合わせて傾けないと日時計は作れない?
傾けなくても影の位置を記録する基本の日時計は作れるが、緯度と同じ角度に傾けると、より精度の高い本格的な日時計になるとされている。
余裕があれば、本格仕様の作例のように角度を調整する工程にも挑戦してみるとよいだろう。
日時計の時刻が実際とズレるのはなぜ?
均時差と呼ばれる季節ごとのずれのために、日時計の時刻が最大17分ほど実際の時刻とずれることがあると解説されている。
これは地球の公転軌道が完全な円ではないことなどが関係しているとされる現象だ。
考察:日時計の自由研究に共通する強みとは
ここまでベネッセ、Honda Kids、学研×朝日新聞キッズネットという3つの一次情報源をもとに、日時計の作り方を難易度別に見てきた。
筆者としては、この3つに共通する強みは「作って終わりにならない」ことだと感じている。
影の位置を記録するという単純な作業の繰り返しが、緯度や均時差といった地学的なテーマにまで自然につながっていく。
3つの作例の共通点と相違点を整理すると、次のようになる。
- 共通点:いずれも「割りばしや棒の影を1時間おきに記録する」という基本原理は同じ
- 共通点:本格仕様の2作例は、いずれも観測地の緯度に角度を合わせて精度を高めている
- 相違点:ベネッセ版は傾けずに作れる入門仕様、Honda Kids版と学研×朝日新聞キッズネット版は緯度に合わせて傾ける本格仕様
- 相違点:学研×朝日新聞キッズネット版だけが「均時差」による時刻のズレにまで踏み込んでいる
学年やその年の意欲に合わせて選べるのも良い点だと考えられる。
今回、実際に自分の手で作ってみて感じたのは、角度を35度に傾けるという「数字」だけを本で読むのと、実際に分度器を当てて割りばしを固定するのとでは、理解の深さがまったく違うということだ。
方位磁石を金属の近くで使って北がズレるという失敗も、実際にやってみなければ気づけなかった点だ。
こうした「うまくいかなかったこと」もそのまま自由研究のレポートに書き添えると、単に完成品を見せるだけの発表より、はるかに説得力のある内容になると筆者は考えている。
今後は、こうした工作系の自由研究とプログラミングやセンサーを組み合わせた発展形も増えていくと筆者は見ている。
その根拠のひとつが、近年の小中学校でのプログラミング教育の必修化だ。
明るさセンサーやタイマー機能を使い、影の位置ではなく光の強さの変化を自動で記録する、という発展的な自由研究に取り組む事例がすでに教育現場の作品紹介などで見られるようになっている。
日時計という古典的なテーマであっても、記録の取り方をアナログからデジタルへと発展させることで、探究の幅がさらに広がっていくのではないかと筆者は考えている。
まとめ
自由研究で「時計」をテーマにするなら、身近な材料で作れる日時計が定番であり、入門仕様から緯度を使った本格仕様まで、難易度別に選べる。
傾ける角度は住んでいる地域の緯度に合わせるのが基本で、8月であれば札幌約43度、仙台約38度、東京約35度、大阪約34度、鹿児島約31度、那覇約26度が目安になる。
均時差という季節ごとのずれを知っておくと、時刻表示との違いにも納得がいくはずだ。
実際に手を動かして影の位置を追いかける半日は根気のいる作業だが、その分だけ、教科書だけでは得られない実感が残る自由研究になるだろう。


コメント