リモートワークを廃止した企業とその理由

オフィスに戻ってくる社員たちと、リモートワークの象徴だったノートパソコンが対比的に描かれたイメージ 未分類
  1. リモートワーク廃止とは?なぜ今このニュースが増えているのか
  2. 海外企業はどうリモートワークを廃止したのか
    1. Amazon(アマゾン):週5日フル出社へ完全移行
    2. IBM:2009年の「完全在宅先駆け」からの方針転換
    3. 米ヤフー(Yahoo):2013年という早すぎた決断
    4. Meta(旧Facebook):週3日出社+従業員ごとの柔軟対応
    5. Google:段階的に強化されてきた出社義務
    6. アクセンチュア:段階を踏んでの完全出社回帰
    7. Microsoft:柔軟な制度を維持する対照的な立場
  3. 日本企業のリモートワーク廃止事例は?
    1. AWSジャパン:親会社の方針にあわせ週5日出社
    2. Honda(本田技研工業):変革期こそ対面重視
    3. LINEヤフー:週1〜月1回の出社制度に改定
    4. GMOインターネットグループ:現実的なバランス型の出社回帰
  4. なぜ企業はリモートワークを廃止するのか?主な理由
    1. 理由1:コミュニケーション不足への懸念
    2. 理由2:組織文化の維持のため
    3. 理由3:生産性を上げるため
    4. 理由4:従業員間の公平性を保つため
    5. 理由5:新型コロナウイルス感染症の5類変更に伴う措置解除のため
  5. リモートワーク廃止後の出社実態はどうなっている?
  6. リモートワーク廃止で企業が直面する課題
    1. 従業員の反発とモチベーション低下
    2. 優秀な人材の退職・転職リスク
    3. オフィスコストの増加とBCP見直し
  7. リモートワーク廃止と出社回帰、今後どうなる?(考察)
    1. 会社員・経営者は今、何をすべきか
    2. 過去のフレックスタイム論争との共通点
    3. 生産性評価が年々厳しくなる理由
  8. まとめ:リモートワーク廃止の流れとこれからの働き方
  9. よくある質問
    1. リモートワークを完全に廃止した企業はどこですか?
    2. 出社義務化に従業員が反対した場合、どうなりますか?
    3. 出社回帰の流れは今後も続きますか?

結論から言うと、Amazonが2025年1月から週5日フル出社を義務化したのを皮切りに、IBMや米ヤフー、そして日本のHondaやLINEヤフーまで、コロナ禍でリモートワークを推進した企業が次々と「出社回帰」に舵を切っているわけです。

理由はひとつではありません。コミュニケーション不足への懸念、生産性への疑問、組織文化の維持、そして新型コロナウイルス感染症の5類移行など、複数の要因が重なっています。

今日は「リモートワーク廃止した企業」というテーマで、海外・国内それぞれの具体的な事例と、その裏にある理由を、私なりに噛み砕いて整理してみようと思います。

「うちの会社もそろそろ出社に戻すのかな」なんて不安を感じている方にも、逆に「テレワークを守りたい」と思っている方にも、判断材料になる内容にしたつもりです。

  1. リモートワーク廃止とは?なぜ今このニュースが増えているのか
  2. 海外企業はどうリモートワークを廃止したのか
    1. Amazon(アマゾン):週5日フル出社へ完全移行
    2. IBM:2009年の「完全在宅先駆け」からの方針転換
    3. 米ヤフー(Yahoo):2013年という早すぎた決断
    4. Meta(旧Facebook):週3日出社+従業員ごとの柔軟対応
    5. Google:段階的に強化されてきた出社義務
    6. アクセンチュア:段階を踏んでの完全出社回帰
    7. Microsoft:柔軟な制度を維持する対照的な立場
  3. 日本企業のリモートワーク廃止事例は?
    1. AWSジャパン:親会社の方針にあわせ週5日出社
    2. Honda(本田技研工業):変革期こそ対面重視
    3. LINEヤフー:週1〜月1回の出社制度に改定
    4. GMOインターネットグループ:現実的なバランス型の出社回帰
  4. なぜ企業はリモートワークを廃止するのか?主な理由
    1. 理由1:コミュニケーション不足への懸念
    2. 理由2:組織文化の維持のため
    3. 理由3:生産性を上げるため
    4. 理由4:従業員間の公平性を保つため
    5. 理由5:新型コロナウイルス感染症の5類変更に伴う措置解除のため
  5. リモートワーク廃止後の出社実態はどうなっている?
  6. リモートワーク廃止で企業が直面する課題
    1. 従業員の反発とモチベーション低下
    2. 優秀な人材の退職・転職リスク
    3. オフィスコストの増加とBCP見直し
  7. リモートワーク廃止と出社回帰、今後どうなる?(考察)
    1. 会社員・経営者は今、何をすべきか
    2. 過去のフレックスタイム論争との共通点
    3. 生産性評価が年々厳しくなる理由
  8. まとめ:リモートワーク廃止の流れとこれからの働き方
  9. よくある質問
    1. リモートワークを完全に廃止した企業はどこですか?
    2. 出社義務化に従業員が反対した場合、どうなりますか?
    3. 出社回帰の流れは今後も続きますか?

リモートワーク廃止とは?なぜ今このニュースが増えているのか

オフィスへ向かうビジネスパーソンの朝の通勤風景
※画像はAIによるイメージ

Amazon、IBM、米ヤフー、そして日本のHondaやLINEヤフーなど、名だたる企業が続々とリモートワークを縮小しているのが、今まさに起きている現象です。

「リモートワーク廃止」というニュースが、この1〜2年で急増しているのも事実です。

コロナ禍の真っ只中、2020年から2021年にかけて、日本企業のテレワーク導入率は総務省「通信利用動向調査」によると47.5%から51.9%まで一気に跳ね上がりました。

ところが新型コロナウイルス感染症が2023年5月に5類感染症へ移行してからは流れが変わり、同じ調査で2023年には49.9%、2024年には47.3%前後まで下がってきています。

つまり「感染対策として仕方なくやっていたテレワーク」を、平時に戻すタイミングで見直す企業が増えている、というのが今の実情なわけです。

面白いのは、政府自体は総務省がテレワークの普及・定着を引き続き推進する方針を示している点。企業側の判断と、国の旗振りとの間に、ちょっとしたズレが生まれているのも今回のテーマの興味深いところです。

筆者としては、この「政府は推進、企業は見直し」というねじれ自体が、今後のリモートワーク論争の火種になっていくのではないかと見ています。制度としての旗は掲げつつ、現場の運用は各社の裁量に委ねられている以上、業界差・企業差はこれからも広がっていくはずです。


海外企業はどうリモートワークを廃止したのか

アメリカの大手IT企業のオフィスビル外観
※画像はAIによるイメージ

海外、特にアメリカのIT大手企業の動きは、日本企業にも大きな影響を与えています。ここでは代表的な事例を見ていきましょう。

Amazon(アマゾン):週5日フル出社へ完全移行

Amazonは2025年1月から週5日の完全オフィス勤務を導入し、それまで認めていた週2回のリモートワークを含む「ハイブリッド勤務」を廃止しました。

世界最大級のテック企業がここまで踏み込んだことは、業界全体に衝撃を与えたと言っていいでしょう。

個人的には、この決断が他の大手企業に「出社回帰しても許される」という空気を作った、いわば号砲のような役割を果たしたのではないかと考えています。

IBM:2009年の「完全在宅先駆け」からの方針転換

IBMは2017年10月の時点で在宅勤務をしていた数千人規模の従業員に対し、オフィス勤務への復帰を命じています。

IBMは2009年には完全在宅勤務を認めていた「テレワークの先駆け」だっただけに、この方針転換は当時大きな注目を集めました。

テレワークの元祖ともいえる企業が真っ先に方向転換したという事実は、今振り返ると象徴的な出来事だったように思います。

米ヤフー(Yahoo):2013年という早すぎた決断

米ヤフーはさらに早く、2013年にテレワーク廃止を発表しています。

当時のCEOマリッサ・メイヤー氏は、リモートワークが業務のスピードと品質に懸念をもたらすと説明し、全従業員にオフィス出社を求めました。

今でこそ「出社回帰」は珍しくないですが、2013年という早い段階でこの決断をしていたのは、正直かなり先見的だったのかもしれません。

Meta(旧Facebook):週3日出社+従業員ごとの柔軟対応

Metaは2023年9月から、週3日の出社を義務付けました。

ただし完全リモートで採用された従業員には引き続き柔軟性を持たせるなど、一律の完全廃止ではなく、従業員ごとに細かなルールを設けているのが特徴です。

この「例外を残す設計」は、優秀な人材を逃さないための現実的な落としどころだと私は捉えています。

Google:段階的に強化されてきた出社義務

Googleは2022年4月から週3日の出社を求めるハイブリッド勤務を導入しました。当初はバッジ管理などの厳格な運用はなく、比較的緩やかなスタートだったようです。

ところが2023年6月、社員のバッジ入退室記録を人事評価に反映させるなど、既存の週3日ルールを強化する運用に切り替えたと米メディアCNBCが報じています。

さらに2025年4月には、完全リモート勤務だった一部社員に対し、オフィスから50マイル圏内への引っ越しとハイブリッド勤務への移行を求め、応じない場合は退職パッケージを提示したとも報じられました。

つまりGoogleは「ある日突然、週5日出社を命じた」わけではなく、2022年の緩やかな導入から段階的に締め付けを強めてきたというのが実態に近いわけです。Amazonのような週5日フル出社は今のところ行っておらず、同じ「大手IT企業」でも温度差があることがわかります。

アクセンチュア:段階を踏んでの完全出社回帰

コンサルティング大手のアクセンチュアは、2023年10月に週3日出社のハイブリッドワークへ移行したのち、2025年6月1日からは週5日のフル出社を求めるようになりました。

段階を踏んでの完全出社回帰という、ある意味わかりやすいパターンです。クライアント対応が中心のコンサル業界らしく、対面での信頼構築を重視する姿勢がにじんでいます。

Microsoft:柔軟な制度を維持する対照的な立場

一方でMicrosoftは対照的な立場を取っています。

勤務時間のうち50%をリモートワークに充てられる柔軟な制度を維持し、生産性の低下が確認されない限りAmazonのような厳格な出社義務化はしないと従業員に伝えたと報じられています。

同じテック業界でも、方針が真っ二つに分かれているのが今のリアルなんですね。

ここまでの海外企業の動きを一覧で整理すると、こんな感じになります。

| 企業 | 出社方針 | 開始・変化の時期 |
|—|—|—|
| Amazon | 週5日フル出社 | 2025年1月 |
| IBM | オフィス復帰命令 | 2017年10月 |
| 米ヤフー | 全従業員オフィス出社 | 2013年 |
| Meta | 週3日出社(例外あり) | 2023年9月 |
| Google | 週3日導入→2023年に運用強化→2025年に一部厳格化 | 2022年4月〜 |
| アクセンチュア | 週5日フル出社 | 2025年6月 |
| Microsoft | 最大50%リモート維持 | 継続中 |

こうして並べてみると、ITハードウェア・小売寄りの企業ほど出社回帰が早く・強く、コンサルやソフトウェア寄りの企業ほど柔軟性を残す傾向があるように見えます。

筆者としては、これは業務の性質(対面での対人サービスが多いか、コード中心の個人作業が多いか)が大きく影響していると考えています。


日本企業のリモートワーク廃止事例は?

日本のオフィスで働く社員たちの様子
※画像はAIによるイメージ

続いて日本国内の動きを見てみましょう。海外ほど極端ではないものの、確実に出社回帰の流れは強まっています。

AWSジャパン:親会社の方針にあわせ週5日出社

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、親会社Amazonの方針に足並みを揃える形で、2025年1月から原則週5日の出社を求めるようになりました。

グローバル企業の日本法人が、本国の方針にどこまで追随するかという点でも注目された事例です。

Honda(本田技研工業):変革期こそ対面重視

本田技研工業は2022年、本部や研究所を含む国内全部署に対して原則出社を通達しています。

新型コロナウイルス感染症が落ち着きを見せる中、「変革期こそ対面でのコミュニケーションを重視する」という判断があったとされています。

自動車業界はEVシフトなど大きな変革期にあるだけに、この判断は業界特有の事情を反映していると私は見ています。

LINEヤフー:週1〜月1回の出社制度に改定

LINEヤフーは2025年4月から、事業部門は週1回、それ以外の部門は月1回の出社を求める制度に改定しました。

対象は正社員だけでなく契約社員・嘱託社員・アルバイトにも及びます。同社は「新しいプロダクトを生み出すためには対面コミュニケーションの良さを今まで以上に取り入れる」と理由を説明しており、完全リモートを掲げていた過去の採用方針との違いに戸惑う声もSNS上で見られました。

個人的には、IT系企業でも「新規プロダクト創出」の場面では対面の価値が見直されているという点が興味深く、この動きは今後、他のプラットフォーム系企業にも波及しやすいのではないかと感じています。

GMOインターネットグループ:現実的なバランス型の出社回帰

GMOインターネットグループは2023年2月、週2日の在宅勤務推奨を廃止し、原則出社へ切り替えています。

ただしオフィス賃料削減とパートナーへの還元を目的とした計画的な在宅勤務は認めるなど、現実的なバランスも取り入れているのが特徴です。

日本企業の動きも一覧にまとめておきましょう。

| 企業 | 出社方針 | 開始時期 |
|—|—|—|
| AWSジャパン | 原則週5日出社 | 2025年1月 |
| Honda | 全部署で原則出社 | 2022年 |
| LINEヤフー | 週1回〜月1回出社 | 2025年4月 |
| GMOインターネットグループ | 原則出社(例外あり) | 2023年2月 |

こうして並べてみると、日本企業の多くは「完全廃止」というよりも、週1〜3日程度の出社を義務付ける「ハイブリッドワーク」への移行を選んでいるケースが目立ちます。

海外の大企業ほど極端に振り切らないあたりに、日本らしい慎重さを感じる方も多いのではないでしょうか。


なぜ企業はリモートワークを廃止するのか?主な理由

ここまで事例を見てきましたが、では実際に企業側はどんな理由でリモートワーク廃止を決めているのでしょうか。大きく分けて5つの理由が挙げられます。

理由1:コミュニケーション不足への懸念

チャットやオンライン会議では、対面で生まれるような雑談や偶発的なアイデア交換が起きにくいという課題があります。

実際に2025年1月実施の「出社に関する実態調査」(Job総研)でも、出社が必要だと思う理由として「質問や意見交換がしやすい」(66.4%)、「リモートより深い意思疎通が叶う」(45.5%)が上位に挙がっています。

理由2:組織文化の維持のため

対面での交流が減ることで、企業理念や価値観が伝わりにくくなるという懸念です。

特に新人教育やOJTでは、先輩の仕事ぶりを間近で見る機会が減ることが、人材育成上の課題になっているようです。

理由3:生産性を上げるため

日経BP総合研究所が実施した企業向け調査(2024年10月調査)では、テレワークによる生産性が「下がった」と回答した割合が45.5%にのぼり、2024年4月調査時の34.9%から増加しています。

逆に「上がった」は22.0%に留まり、2024年4月の28.4%から縮小しました。この数字を見る限り、テレワークの生産性への評価は、実は年々厳しくなっている印象を受けます。

理由4:従業員間の公平性を保つため

現場作業が必須の職種と、リモートが可能なオフィスワーカーとの間で不公平感が生まれることも、全社的に出社体制へ戻す理由のひとつです。

製造業や小売業のように、そもそもリモート化できない職種を抱える企業ほど、この「公平性」の論点が重視されやすい傾向があると私は感じています。

理由5:新型コロナウイルス感染症の5類変更に伴う措置解除のため

2023年5月の5類移行により、感染防止措置としてのテレワーク実施義務がなくなったため、臨時的な制度を見直す企業が増えています。


リモートワーク廃止後の出社実態はどうなっている?

実際に働く人たちの出社状況はどう変化しているのでしょうか。2025年1月に実施された「出社に関する実態調査」(Job総研、社会人675名対象)から見てみます。

この調査では、2025年時点の出社頻度は「週5回」が37.6%と最多で、「週4回」(14.2%)、「週3回」(12.6%)と続きます。

全体の51.9%が「出社回帰がある」または「ある予定」と回答しており、実際に出社頻度が増えている実感を持つ人が半数を超えていることがわかります。

興味深いのは、理想の出社頻度を聞くと「週3回」(22.1%)が最も多く、「フルリモート希望」も16.9%いる一方で、「週5出社」を望む人はわずか12.1%にとどまる点です。つまり、企業の方針と従業員の理想には、まだ少なからずギャップがあるということですね。

出社の必要性については、全体の65.2%が「必要だと思う」と回答しており、理由の1位は「質問や意見交換がしやすい」(66.4%)でした。リモートを望みつつも、出社の意義自体は多くの人が認めている、というなんとも複雑な心境がうかがえます。


リモートワーク廃止で企業が直面する課題

出社回帰にはメリットもありますが、当然リスクもあります。

従業員の反発とモチベーション低下

まず大きいのが従業員の反発やモチベーション低下です。

フルリモート前提で地方移住した従業員や、ワークライフバランスを重視して働き方を選んだ従業員にとって、出社義務化は生活基盤を揺るがす問題になりかねません。

優秀な人材の退職・転職リスク

優秀な人材の退職・転職リスクも無視できません。

日本生産性本部が実施した「働く人の意識に関する調査」(2023年5〜6月、就業者1,000名対象)では、テレワーク廃止を受けて退職を考える割合が管理職以外で16.4%、管理職で9.6%という結果が出ています。

オフィスコストの増加とBCP見直し

さらにオフィスコストの増加も見逃せません。リモートワーク導入時にオフィスを縮小した企業ほど、スペースの拡張や設備投資、光熱費増加といったコストが再び発生します。

そしてBCP(事業継続計画)対策の見直しも重要な論点です。

地震や感染症拡大などでオフィスが機能しなくなった場合、テレワーク体制がなければ事業継続が難しくなる可能性があります。テレワークを事業継続計画の一環として位置づけていた企業ほど、この点は慎重に検討する必要があるでしょう。


リモートワーク廃止と出社回帰、今後どうなる?(考察)

ここからは私の考察になりますが、今回いろいろな企業の事例を並べてみて感じたのは、「完全廃止」と「完全リモート継続」という両極端な選択をする企業は、実はそう多くないということです。

Amazonやアクセンチュアのように週5日フル出社へ踏み切った企業がニュースでは目立ちます。

しかしGoogleやMicrosoft、日本のLINEヤフーやGMOインターネットグループのように、週1〜3日程度の出社を軸にした「ハイブリッドワーク」を選ぶ企業のほうが、実態としては多数派だと私は見ています。

これは考えてみれば当然の流れです。コミュニケーションや組織文化の面では出社にメリットがある一方、優秀な人材の確保やワークライフバランスの面ではリモートワークにも明確な価値があるからです。

どちらか一方を完全に切り捨てるのは、企業にとってリスクが大きすぎるわけですね。

個人的には、今後さらに増えていくのは「目的別のハイブリッドワーク」ではないかと考えています。共同作業やブレストは出社、個人での集中作業はリモート、というように、業務内容に応じて働く場所を柔軟に選べる仕組みです。

すでにこうした運用を取り入れている企業も出てきており、今後の主流になっていく可能性は十分あるでしょう。

会社員・経営者は今、何をすべきか

ここで少し実務的な視点を加えておきます。

会社員の立場からすると、今後は「出社しないと評価されない業務」と「リモートでも成果が見える業務」を、自分の仕事の中で切り分けておくことが重要になると私は考えます。

上司や人事が出社頻度だけで評価しがちな組織ほど、成果を可視化する工夫(議事録の共有、進捗レポートの明文化など)をしておくと、方針転換に振り回されにくくなるはずです。

経営者・管理職の立場からすると、私が事例を見ていて特に感じるのは、LINEヤフーのように「なぜ対面が必要なのか」を具体的な理由(新規プロダクト創出など)とセットで説明できている企業ほど、従業員の納得感を得やすいという点です。

逆に理由を示さず日数だけを押し付ける企業は、後述するように人材流出のリスクを抱えることになります。

過去のフレックスタイム論争との共通点

もうひとつ、私が考察として付け加えておきたいのが、働き方の制度は「振り子」のように揺れ動いてきた歴史がある、という視点です。

日本では2000年代以降、フレックスタイム制の導入が進んだ時期がありましたが、一部の企業では「コアタイムなしのフレックスは管理が難しい」として、後にコアタイムを再設定したり、対象部署を絞り込んだりする揺り戻しが起きたことがあります。

制度を大きく緩めた後、運用上の課題が見えてきて部分的に締め直す、という流れは、今回のリモートワーク廃止の動きとかなり似た構造を持っていると私は感じます。

つまり「新しい働き方への期待感が先行し、数年経って現実的な課題が可視化され、制度が調整される」というサイクルは、今回が初めてではないということです。この歴史を知っておくと、今のリモートワーク廃止のニュースも、少し冷静に受け止められるのではないでしょうか。

また、リモートワーク廃止のニュースが出るたびにSNSでは賛否両論の声が上がります。企業側にとって重要なのは「なぜ出社を求めるのか」を従業員にきちんと説明し、納得感を持ってもらうプロセスだと私は考えます。

一方的な方針転換は、たとえ経営判断として合理的だったとしても、従業員の信頼を損ないます。結果的に人材流出という形で跳ね返ってくるリスクがあるからです。

生産性評価が年々厳しくなる理由

もうひとつ付け加えておきたいのは、テレワークの生産性に関する調査結果が年々厳しくなっている点です。

日経BP総合研究所の調査で「生産性が下がった」と感じる人が増加していることは、単なる印象論ではないと私は考えています。

リモートワーク特有の構造的な課題、つまり偶発的なコミュニケーションの欠如や自己管理の難しさが、時間が経つにつれて表面化してきた結果ではないでしょうか。

コロナ禍初期は「新しい働き方」への期待感があったぶん、満足度も高く出やすかったのだと思います。数年経って冷静に評価されるようになった、という側面もありそうです。

こうした背景を踏まえると、今後は「一律の出社回帰」ではなく、職種や業務内容ごとに最適な働き方を細かく設計する企業が増えていくと私は予想しています。


まとめ:リモートワーク廃止の流れとこれからの働き方

ここまで、AmazonやIBM、Meta、Google、アクセンチュアといった海外企業、そしてHonda、LINEヤフー、GMOインターネットグループ、AWSジャパンといった日本企業の事例を中心に、リモートワーク廃止の背景を見てきました。

廃止の理由はコミュニケーション不足への懸念、生産性への疑問、組織文化の維持、公平性の確保、そして5類移行に伴う制度見直しと、複数の要因が絡み合っています。

一方で、廃止には従業員の反発や人材流出、オフィスコスト増加といったリスクも伴うため、多くの企業は完全廃止ではなくハイブリッドワークという着地点を選んでいるのが実情です。

働く側としても、企業側としても、「出社かリモートか」の二択で考えるのではなく、自分たちにとって最適なバランスはどこにあるのかを、これからも探り続けていく必要がありそうです。


よくある質問

リモートワークを完全に廃止した企業はどこですか?

海外ではAmazon、IBM、米ヤフー、アクセンチュアなどが完全オフィス勤務へ移行しています。日本ではAWSジャパンやHondaが原則出社の方針を打ち出しています。

出社義務化に従業員が反対した場合、どうなりますか?

企業によって対応は異なりますが、Googleの事例のように、方針に応じられない従業員には自主退職パッケージが提示されるケースもあると報じられています。実際に日本生産性本部の調査では、テレワーク廃止をきっかけに退職を考える人が一定数いることも明らかになっており、従業員側にとっても働き方の見直しを迫られる局面になり得ます。

出社回帰の流れは今後も続きますか?

Amazonやアクセンチュアのように週5日フル出社へ進む企業がある一方、Microsoftのように柔軟な制度を維持する企業もあり、業界や業種によって方向性は分かれています。筆者としては、今後は「一律の出社回帰」よりも、業務内容ごとに出社とリモートを使い分ける「目的別ハイブリッドワーク」が主流になっていくと考えています。

なお、本記事内の各種調査データや各社の制度内容は取材・報道時点のものです。最新の数値や制度の詳細については、各企業・各調査機関の公式発表を確認することをおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました