結論から言うと、NTTグループはリモートワークを廃止していません。
2026年5月時点でもグループ各社の実施率は40〜72%台という高水準を維持しており、廃止されたのはむしろ「転勤・単身赴任」の原則のほうなんです。
「NTT リモートワーク 廃止」で検索してこのページに来た方も多いと思いますが、実際に起きているのは廃止どころか真逆、リモートワークの定着・深化なんです。
NTTのリモートワークは廃止されたのか?結論を先に

まず一番気になるであろう「廃止」の真相からお話ししましょう。
NTTがリモートワーク制度そのものをやめるという発表は確認できません。廃止されたのは、日本企業に根強く残っていた「転勤」と「単身赴任」の慣行のほうです。
なお本記事で「NTTグループ」と呼ぶ際は、主に持株会社のNTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)、NTTデータグループ、NTTドコモの主要6社を指しています。以降の実施率の表も、この6社を対象にしたものです。
NTTは2021年9月28日、コロナ収束後もテレワークを基本とする働き方を続け、転勤や単身赴任を原則廃止する方針を打ち出しました。あわせて、サテライトオフィスを260拠点以上に拡大することも視野に入れると発表しています。
首都圏に集中していた本社機能や管理部門を地方の中核都市に分散し、ネットワーク型の組織へ変革することが狙いだったとされています。
つまり「出社しなくても働ける環境を前提に、住む場所や働く場所の自由度を上げていく」という方向性であって、リモートワークを縮小する話ではないわけです。ここを取り違えると、記事の趣旨がまるで逆になってしまうので注意が必要ですね。
個人的には、この「廃止」という言葉が転勤・単身赴任にかかっているのに、リモートワークの話だと誤解されやすい点こそが、この話題が検索でよく混同される原因だと感じています。
いつからリモートワークが基本になったのか
NTTグループのリモートワーク推進には、はっきりとした時系列があります。
2022年、NTTグループはコロナ禍を契機にリモートワークを基本とする働き方をスタートさせました。この時点で国内グループの主要企業の従業員約3万人が対象となり、7月から「原則在宅勤務」という制度が本格的に走り出しています。
働き方に詳しい識者の分析として、日系IT企業が外資系企業との人材獲得競争にさらされる中で、優秀な人材の流出を防ぐ狙いがあったのではないか、という見方が当時の報道で紹介されていました。NTTや日立といった日系IT企業が、人材獲得の場面で外資系と直接ぶつかる機会が増えていた、という背景があったようです。
制度導入と同時に、通勤定期代の支給は実費払いに変更され、光熱費や水道・通信費に相当する「リモートワーク手当」の支給も始まりました。
フレックスタイム制度についても、必ず勤務しなければならない「コアタイム」を撤廃し、1日の中で一時的に仕事をしない時間帯をつくれる「分断勤務」という柔軟な仕組みも導入されています。
これは単なる「在宅勤務OK」という制度ではなく、働く時間の使い方まで踏み込んだ、かなり本格的な制度改革だったと言えるでしょう。
2026年5月時点の最新実施率はどうなっている?
ここが読者の一番知りたいポイントかもしれません。「今も本当にリモートワークって続いているの?」という疑問への答えです。
NTT公式サイトが公表している2026年5月実績によると、グループ各社のリモートワーク実施率は次の通りです。
| 会社名 | リモートワーク実施率 |
|—|—|
| NTT(持株会社) | 58.2% |
| NTT東日本 | 60.2% |
| NTT西日本 | 40.0% |
| NTTドコモビジネス | 72.2% |
| NTTデータグループ | 53.4% |
| NTTドコモ | 58.2% |
※この実施率は自宅での在宅勤務実績のみを集計したもので、サテライトオフィスの利用分は含まれていません。また、現場作業や店舗業務などエッセンシャルワーカーを除いた、オフィスワーク系の職種を対象とした数字です。全社員一律の割合ではなく、そもそも在宅勤務が可能な職種の中での実施率、という位置づけである点にご注意ください。

その前提のうえで見ても、いずれの会社も40%を超えていて、特にNTTドコモビジネスは72.2%と非常に高い水準を維持しています。
ちなみに2025年5月時点の実績では、NTTドコモビジネスが73.1%、NTT東日本が63.2%と報じられており、主要グループ会社が軒並み50%を超えていました。
1年経った2026年5月の数字と比べても大きく崩れておらず、コロナ禍が明けても在宅勤務が「一時的な緊急対応」ではなく「定着した働き方」になっていることが数字からも読み取れます。
これは「廃止どころか、むしろ定着期に入っている」ということを裏付ける、かなり分かりやすいデータだと思うわけです。
NTTデータのリモートワーク事情は?他社と違いはあるのか
「nttデータ リモートワーク」で検索してくる方も多いので、NTTデータグループについても触れておきましょう。
2026年5月実績ではNTTデータグループの実施率は53.4%でした。この数字には、持株会社であるNTTデータグループ、国内事業会社のNTTデータ、海外事業会社のNTT DATA, Inc.が含まれています。
NTTデータの公式採用サイトで公表されている情報によると、2024年度のリモートワーク率は60.5%で、リモートワーク手当も完備されているとのことです。さらにフレックスタイム制度・裁量労働制・スーパーフレックス制度が導入されており、これらの利用率は全社員の約7割に達しているとされています。
有給休暇についても、同じく同社採用サイトで公表されている2024年度実績として、平均取得日数は15.5日、取得率は79.8%という数字が示されており、働き方の柔軟性を数字で裏付ける内容になっています。制度の詳しい最新情報は、変動する可能性もあるため同社の公式サイトで確認するのが確実です。
NTTデータは中期経営計画で「Foresight起点のコンサルティング力の強化」を戦略の柱の一つに掲げており、国内グループ全体で2,700人以上がコンサルタントとして活躍しているとのこと。
専門性の高い人材を確保するうえでも、柔軟な働き方は採用競争力を左右する重要な要素になっていると考えられます。社内には技術者向けの「テクニカルグレード(TG)制度」や「ADP制度」といった、専門性を軸にキャリアを積める仕組みもあるようで、リモートワークと専門職キャリアの両立を意識した制度設計になっている印象です。
筆者としては、NTTデータがこうした数字を採用サイトで公表していること自体が興味深いと感じています。働き方の柔軟性が、給与や福利厚生と並ぶ「採用の武器」として明確に位置づけられている証拠だからです。
現場ではどう活用されている?制度の中身をもう少し詳しく
制度が数字の上でどう機能しているかだけでなく、実際にどう使われているのかも見ておきましょう。
NTTグループが力を入れているのが「分断勤務」という仕組みです。これは1日の勤務時間の中に一時的な中断を挟めるようにする制度で、たとえば日中に子どもの送迎や通院のために一時的に業務を離れ、その分を夕方以降に回す、といった働き方が可能になります。

NTTの人事担当部門では、出社を前提としていた頃に比べて、リモート勤務そのものへの不満や「取りにくさ」が徐々になくなってきている、という手応えが社内で共有されていると伝えられています。
また、日本全国どこからでも働ける「リモートスタンダード制度」の対象社員は、導入時の2022年には約3万人だったのが、現在は約5万3000人まで増加しています。
居住地を自由にできるこの制度によって、単身赴任者の数も1600人減少し、約3300人まで減ったとのことです。
数字の変化を見る限り、制度は「導入してみた」段階からすでに一歩進み、実際の暮らし方・働き方に根を張ってきている段階と言えそうです。育児や介護と両立させながら分断勤務やフレックスを組み合わせる働き方は、今後も他社が制度設計を検討するうえでの一つのモデルケースになっていくのではないかと個人的には見ています。
ホンダとの対比に見る、出社回帰との分かれ道
NTTのこうした動きは、出社回帰を選んだ企業との対比でよく取り上げられます。
象徴的なのが、ホンダとの比較です。ホンダは2022年5月のゴールデンウィーク明けから、工場や研究所も含めた全従業員を対象に、原則週5日出社へ方針転換しました(育児や介護など事情がある場合は引き続き在宅勤務が可能)。
同じ時期に、NTTは国内グループ従業員3万人を対象に「原則在宅勤務」を打ち出しており、両社の方針は真逆の方向を向いていました。この対比が「テレワークをやめる企業と続ける企業の分岐点」として、当時大きな話題になったわけです。
このあたりは業種の違いが大きく影響していると私は考えています。工場やものづくりの現場を抱える製造業と、通信・ITサービスを中心とするNTTグループとでは、そもそも「対面でなければ成立しない業務」の比率が大きく異なるからです。
パーソル総合研究所の研究員による分析として、テレワークをめぐる企業の判断について、経営側は生産性やイノベーションへの不安を抱える一方、従業員はテレワーク継続を望む人が多く、人材確保への影響も無視できないため、板挟み状態にある企業が多いという指摘が報じられていました。
出社かリモートかという二択に見えて、実際には業種特性・人材戦略・経営陣の判断が複雑に絡み合っており、単純な優劣で語れる話ではない、というのが両社の対比から見えてくる実像だと思います。
テレワークの課題と海外の潮流をどう見るか
一方で、テレワークには課題も指摘されています。
職場出勤時代に問題になっていたハラスメントは減った一方、「誰も助けてくれない」「何のためにこの仕事をしているのか分からなくなる」といった孤独感を抱える人が増えたという声が報じられており、メンタルヘルス面での新たな課題として挙げられています。
アメリカでは対面コミュニケーションの価値が見直され、グーグルやアップルが週2〜3日出社の「ハイブリッド型」勤務を採用する流れも出てきています。世界的に見ても「フルリモートか、フル出社か」の二択ではなく、それぞれの企業が自社に合った落としどころを探っている段階だと言えそうです。
こうした潮流を踏まえると、NTTが今後も一律にリモート推進を続けるというより、職種や業務内容に応じてハイブリッド的な運用を細かく調整していく可能性は十分あると私は見ています。
考察:NTTの選択は何を意味するのか
ここからは筆者としての見方をもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。
私が興味深いと感じるのは、NTTが単に「在宅勤務OK」という制度を作っただけでなく、転勤・単身赴任という日本企業の雇用慣行そのものにメスを入れた点です。
戦後日本の「日本的経営」は、終身雇用や年功序列と引き換えに、労働者側が転勤や単身赴任を受け入れる「内部労働市場」によって支えられてきたと言われます。NTTが2021年10月から全管理職を対象に「ジョブ型」人事制度の導入を進めていることも合わせて考えると、この一連の改革は単なる働き方の見直しというより、戦後日本型雇用の土台そのものを変えようとする、かなり大きな挑戦だったのではないかと個人的には感じています。
もう一つ注目したいのは、リモートワークの定着と人材獲得競争が密接に結びついている点です。専門性の高い技術者やコンサルタントを採用する上で、働く場所の自由度は、給与水準と並んで重要な条件になりつつあります。
一方で、テレワークの長時間労働化やメンタル不調のリスクも、看過できない現実として残っています。フランスの「つながらない権利」のような制度的な歯止めがない日本において、分断勤務やコアタイム撤廃といった柔軟な制度が、逆に「いつでも働ける」プレッシャーに転じないよう、運用面での工夫が今後もますます問われることになると私は見ています。
NTTがメンタルを含めた健康状態の定期確認や相談窓口の設置、管理者・社員向けのリモートワーク研修を用意しているのも、こうしたリスクを意識した対応だと考えられます。
今後の見通しとしては、NTTグループがリモートワークを大きく後退させる可能性は低いのではないかと筆者は考えています。2026年5月時点でも実施率が40〜72%台を維持している以上、すでに組織運営や人事制度全体がリモート前提で組み立て直されており、今さら全面出社に戻すコストのほうがはるかに大きいはずだからです。
まとめ:NTTのリモートワークは「廃止」ではなく「深化」している
ここまで見てきた通り、NTTのリモートワークは廃止されたのではなく、2022年の導入以来、着実に定着・深化してきています。
2026年5月時点の実施率はNTT東日本60.2%、NTTドコモビジネス72.2%、NTTデータグループ53.4%など、いずれも高水準です。廃止されたのは転勤・単身赴任の慣行のほうであり、リモートスタンダード制度の対象者は約5万3000人にまで拡大しています。
一方でホンダのように出社回帰を選ぶ企業もあり、日本の働き方は「フルリモートか出社か」の二択ではなく、業種や職種に応じた多様な形へと分かれつつある、というのが今の実像だと言えそうです。
よくある質問
NTTはリモートワークを廃止したのですか?
いいえ、廃止されていません。NTTが廃止したのは転勤・単身赴任の原則であり、リモートワーク自体は2026年5月時点でもグループ各社で40〜72%台の実施率を維持しています。
NTTデータのリモートワーク率はどのくらいですか?
2026年5月実績でNTTデータグループは53.4%です。なお2024年度の実績としては、同社採用サイトの公表情報として60.5%という数字もあります。
NTTがリモートワークを導入したのはいつからですか?
2022年からコロナ禍を契機に本格導入され、7月には国内グループの主要企業の従業員約3万人を対象に「原則在宅勤務」の制度がスタートしています。


コメント