退職代行サービスで逮捕者?モームリ社長逮捕事件の真相を解説

退職代行サービスの利用者と、逮捕・法律事務所を連想させるニュース報道のイメージ 未分類

退職代行サービス「モームリ」の運営会社の社長らが、2026年2月3日、弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。

容疑の中身は、退職希望者を提携先の弁護士に紹介し、その見返りとして1人あたり約1万6500円の紹介料を受け取っていたというものです。

結論からお伝えすると、モームリのサービス自体は経営体制を変えたうえで現在も営業を続けています。

この記事では、逮捕から起訴・公判・営業再開に至るまでの経緯と、退職代行サービスを使ううえで知っておくべき法律上の境界線を、時系列で整理していきます。

モームリ社長逮捕事件とは?何があったのか

退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロス(横浜市中区)の当時の代表取締役・谷本慎二容疑者(37、東京都中野区)が逮捕されました。

同時に、同社従業員で妻の谷本志織容疑者(31、同区)も逮捕されています。

容疑は弁護士法違反(非弁提携)です。

逮捕容疑となったのは、2024年7月上旬から同年10月下旬にかけて、退職希望者6人に関する法律事務を、報酬目的で弁護士らに紹介したという行為です。

警視庁保安課によると、アルバトロス社は二つの弁護士法人から、紹介1件につき1人あたり1万6500円の紹介料を得ていたとみられています。

2人は逮捕当初、「弁護士法違反になるとは思っていなかった」として容疑を否認していたと報じられました。

なお、その後の公判では、2023年3月ごろから2025年にかけて85人分の紹介について、約110万円の支払いがあったと裁判所が認定しています。

逮捕時点の容疑(6人分)と、裁判で確定した関与の範囲(85人分)には差があります。

この点は読者が混同しやすいポイントなので、押さえておきたいところです。


なぜ「紹介料」を受け取ると犯罪になるのか

結論から言うと、弁護士以外が報酬目的で法律事件をあっせんする行為そのものが、弁護士法で明確に禁止されているためです。

弁護士法72条は、弁護士資格を持たない者が報酬を得る目的で法律事件をあっせん(周旋)することを禁じています。

同時に27条は、弁護士側があっせんを受けることも禁止しています。

つまり紹介した側(アルバトロス)だけでなく、紹介を受けた弁護士側も、同じ構造の中で罪に問われる仕組みになっているのです。

法定刑はどちらも2年以下の拘禁刑(懲役)または300万円以下の罰金です。

渡した側と受け取った側で、軽重の差はありません。

なぜここまで厳しく規制されているのか。理由は大きく三つあると考えられます。

  • 紹介料が発生すると、弁護士が「依頼者の利益」より「紹介元への配慮」を優先しかねないこと
  • 資格のない業者が法律事務に関与すると、誤った対応で依頼者が不利益を受けるおそれがあること
  • 法律事務が金儲けの道具として無資格者に支配されると、司法全体への信頼が損なわれること

弁護士は本来、依頼者のためだけに動く「公平・公正」な立場が前提です。

紹介料という金銭のやり取りが間に入ると、この前提が崩れかねません。

だからこそ弁護士法は、紹介・あっせんに金銭が絡む構図そのものを原則禁止にしているのだと考えられます。


紹介料は「賛助金」「業務委託費」の名目で処理されていた

今回の事件で特に注目されているのが、紹介料の受け渡し方法です。

報道によると、この紹介料は、アルバトロス社が提携先と主張していた労働組合「労働環境改善組合」への「賛助金」という名目や、アフィリエイト広告の業務委託費という名目で振り込まれていたとされています。

警視庁保安課は、違法な報酬の受け取りを別の名目で隠す狙いがあったとみています。

先ほど触れた「85人分・約110万円」という認定は、この公判の中で裁判所が示したものです。

虚偽の名目による支払いがあったという点まで含めて、判決で認定されています。

アルバトロス社は2024年8月のプレスリリースで、「労働組合法適合の資格証明を受けた『労働環境改善組合』と提携している」とサービスを紹介していました。

労働組合には団体交渉権という強い武器があります。

業界内では「労働組合と提携していれば安心」というイメージが広がっていました。

しかし今回の事件は、その提携の名目自体が、非弁提携の実態を覆い隠す手段になっていた疑いがある、という点で衝撃を与えました。

これは単なる会計処理の問題というより、違法性を認識しながら形式を整えていた可能性を示すものではないかと筆者は考えています。

あくまで公判で示された事実関係からの推測であり、当事者の内心を断定するものではない点はご留意ください。

※画像はAIによるイメージ

モームリというサービスの実態と規模

改めて、モームリというサービスの位置づけを整理しておきます。

モームリは、本人に代わって勤務先へ退職の意思を伝えるサービスとして2022年3月にスタートしました。

電話やLINEで24時間365日相談を受け付け、勤務先への連絡や退職手続きを代行するという内容です。

料金は正社員が2万2千円、パート・アルバイトが1万2千円です(本記事執筆時点の情報のため、最新の料金は公式サイトでご確認ください)。

公式サイトなどでは「累計4万件以上の退職を確定させた実績とノウハウ」「労働事件に強い顧問弁護士をご紹介」といった打ち出し方をしていました。

運営会社の公表データによれば、2025年1月末までに26,952人が利用しています。

2024年7月末までの15,934人分のデータでは、20代だけで全体の6割以上を占めていました。

最年少は15歳、最高齢は71歳だったとされています。

退職代行業界の中でも、最大手クラスとして知られる存在でした。

朝日新聞は退職代行サービス業界を取材する中で、2025年3月に谷本慎二容疑者本人に取材しています。

その際、谷本容疑者は「全てオープンにやっている」「弁護士との間でお金の受け渡しはない」として、事業に違法性はないと主張していたといいます。

逮捕から遡ることわずか1年足らず前の発言だっただけに、この食い違いも今回の事件を象徴する部分といえるでしょう。


事件のその後:起訴から営業再開までの経緯

逮捕後の経過も、読者が気になるポイントだと思います。

時系列で整理すると次のようになります。

  • 2026年2月3日:警視庁が谷本慎二容疑者と妻を弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕
  • 2026年2月24日:東京地方検察庁が2人を弁護士法違反の罪で起訴
  • 2026年3月31日:運営会社が代表者変更を公表
  • 2026年4月1日:代表取締役が浜田優花氏に交代
  • 2026年4月23日:退職代行サービスの営業再開を発表
  • 2026年5月26日:東京地方裁判所での初公判で、2人が起訴内容を認める
  • 2026年6月5日:検察側が谷本氏に懲役2年、妻に懲役1年6カ月を求刑
  • 2026年6月5日:紹介を受けていた弁護士側にも有罪判決

見落とされがちですが、この事件では紹介を受けた弁護士側も罪に問われています。

2026年6月5日、東京地方裁判所は、紹介を受けていた弁護士法人の代表弁護士に懲役1年6カ月・執行猶予3年、法人には罰金150万円の判決を言い渡しました。

弁護士法7条により、禁錮以上の刑が確定すると弁護士資格そのものを失います。

有罪が確定すれば、この弁護士は職を失うことになります。

無資格の業者だけを取り締まっても、受け皿となる有資格者が残っていれば、同じ構造が繰り返されかねないと考えられます。

だからこそ、あっせんする側とされる側の双方を罰する仕組みになっているのではないでしょうか。

一方でモームリのサービス自体は、経営体制を変えたうえで2026年4月23日に営業を再開しています。

運営会社側は、起訴されたのはあくまで紹介料の受領についてであり、サービス自体に司法判断が下されたわけではないとしています。

つまり事件後も、モームリというサービスそのものは利用できる状態が続いているのです。


退職代行はすべて違法なのか?使者と代理人の境界線

結論を先に言うと、退職代行サービスそのものがすべて違法というわけではありません。

意思を伝えるだけの「使者」なら適法、条件交渉や法的主張を行う「代理人」なら非弁行為のリスクがある、という線引きが目安になります。

この違いを簡単な表で整理すると、次のようになります。

行為の内容位置づけ非弁リスク
「〇月〇日に辞めます」と伝えるだけ使者(伝達のみ)低い
有給消化や退職日の調整を求める条件交渉に近い中〜高い
未払い残業代・慰謝料の請求法的主張(代理人的行為)高い

弁護士資格を持たない業者でも、本人が決めた意思をそのまま会社に伝えるだけの「使者」の範囲であれば、法律上は問題にならないとされています。

これに対して、「有給休暇をすべて消化してから辞めたい」といった条件調整や、「残業代を請求してほしい」といった金銭交渉には注意が必要です。

「法律的には賠償の必要はない」といった法的反論にまで踏み込むと、それは実質的な「代理人」としての交渉行為とみなされる可能性があります。

こうしたケースでは、非弁行為にあたる可能性が高くなると考えられます。

東京地裁の判決(令和2年2月3日)でも、退職代行サービスに関して重要な考え方が示されています。

法的な紛議が生じることがほぼ不可避といえるような事実関係がある場合に、初めて弁護士法72条の「その他一般の法律事件」に該当しうるとされたのです。

単なる意思伝達にとどまり、会社側の反論に対して業者自身が何も判断せず対応を中止したケースでは、非弁行為とはみなされませんでした。

東京弁護士会も2025年10月、退職代行サービスをめぐって注意喚起を出しています。

残業代や慰謝料など法律的な問題について本人に代わって会社と話し合うことや、報酬を得て法律的な問題の処理を他者にあっせんすることは、弁護士法違反となる可能性があるという内容です。

この注意喚起が出されたのと同じ月に、アルバトロス社と関係する弁護士法人への家宅捜索も行われていました。


モームリ事件の本質は?「弁護士監修」という言葉の重み

今回の事件で見えてくるのは、「安さ」と「弁護士監修」という二つの言葉の組み合わせが、実は危うさを隠す装置になり得たという点ではないかと筆者は感じています。

「弁護士監修」の看板と実態のギャップ

モームリは弁護士監修をうたい、「無理な交渉はしません」「手に負えない場合は弁護士を紹介します」というメッセージで、退職に悩む人たちの支持を集めてきました。

しかし「弁護士を紹介する」という行為の裏側で、報酬目的の紹介料が動いていたのであれば、それは業界内で長らく「グレーゾーン」と呼ばれてきた領域から、明確に「違法」の領域へと踏み込んでいたことになると考えられます。

非弁提携をめぐる摘発は、実はモームリに限った話ではありません。

過去にも、司法書士や行政書士が資格外の法律事務を扱い、報酬を得て弁護士にあっせんしていたケースが摘発された例が複数あります。

いずれのケースにも共通しているのは、資格制度と報酬構造の間にあるグレーゾーンを、事業として拡大させてしまった点ではないでしょうか。

退職代行という新しい業態は、こうした非弁提携リスクと隣り合わせで急成長してきた分野だったといえます。

運営モデルによって非弁リスクは変わる

退職代行業界には、大きく分けて三つの運営モデルがあります。

  • 弁護士法人が最初から直接運営し、紹介料という構造自体が発生しないモデル
  • 労働組合が主体となり、団体交渉権の範囲内で対応するモデル
  • 民間業者が「使者」として意思伝達を行い、必要に応じて外部の弁護士へ「紹介」するモデル

今回のアルバトロス社は三つ目のモデルにあたり、この形態には紹介料をめぐる非弁リスクが構造的に内在しやすいと考えられます。

各社が公開している料金や提携弁護士の有無は事業者ごとに情報の粒度が異なり、一律に比較するのは難しいのが実情です。

ただ、少なくとも「誰が」「どの資格に基づいて」対応しているのかという運営モデルの違いは、利用者が事前に確認できるポイントだと筆者は考えています。

筆者としては、この事件の本質は「退職代行というビジネスモデルそのものの是非」よりも、「弁護士監修という言葉の中身をどこまで確かめずに信頼してよいのか」という利用者側のリテラシーの問題を突きつけた点にあると感じています。

「弁護士監修」という表示は、名前を貸しているだけのケースと、実際に弁護士が交渉まで担うケースとでは、意味合いが大きく異なります。

今回の事件で監修的な立場にあったとみられる弁護士側にも有罪判決が出たという事実は、「弁護士が関わっているから安心」という単純な図式が必ずしも成立しないことを示したのではないかと考えられます。


今後の見通し:退職代行業界はどう変わるか

この事件をきっかけに、退職代行業界全体で運営体制の見直しが進む可能性は高いと筆者は見ています。

モームリ自体は経営体制を変えて営業を再開しましたが、今後は「誰が対応するのか」「どこまで対応してもらえるのか」という説明責任が、これまで以上に業者側に求められるようになるはずです。

退職代行市場はここ数年で急速に利用者を増やしてきた分野であり、モームリのような大手事業者の摘発は、業界全体の信頼性に対する目を厳しくする契機になると考えられます。

今後、業界団体や監督官庁による自主基準の整備、あるいは運営モデルの開示ルール強化といった動きが出てくる可能性も否定できません。

利用者側の視点に立てば、依頼を検討する際に確認すべきポイントは、事件の前後で変わっていません。

対応するのが弁護士なのか、団体交渉権を持つ労働組合なのか、それとも意思伝達のみを行う民間業者なのか。

そして、有給消化や未払い残業代の請求など、交渉が必要になりそうな要素が自分のケースにあるかどうか。

交渉が必要になる可能性が少しでもあるなら、最初から弁護士に依頼するほうが、結果的に確実で安心できる選択になると考えられます。

逆に、円満に退職できる見込みが高く、単に意思を伝えるだけで済みそうなケースであれば、民間業者や労働組合のサービスでも十分に機能する場面はあるでしょう。

大切なのは、自分の状況がどちらに近いのかを、依頼前に一度立ち止まって整理することだと筆者は考えています。

料金や在庫、提携先の状況は業者によって変動するため、実際に依頼する際は必ず各社の公式サイトで最新情報を確認してください。


まとめ

退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスの谷本慎二容疑者と妻が、2026年2月3日に弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕されました。

容疑の中心は、退職希望者を提携先の弁護士に紹介し、1人あたり約1万6500円の紹介料を「賛助金」や「業務委託費」の名目で受け取っていたというものです。

その後2人は起訴され、公判では起訴内容を認めました。

検察は谷本氏に懲役2年を求刑し、紹介を受けていた弁護士側にも有罪判決が言い渡されています。

一方でモームリのサービス自体は、経営体制を変えたうえで営業を再開しています。

退職代行サービスがすべて違法というわけではなく、意思を伝えるだけの「使者」にとどまる限りは適法とされています。

ただし、条件交渉や法的主張にまで踏み込むと非弁行為のリスクが生じます。

利用を検討する際は、誰が・どこまで対応してくれるのかを事前にしっかり確認することが重要だと言えるでしょう。


よくある質問

モームリの社長はなぜ逮捕されたのですか?

退職希望者を提携先の弁護士に報酬目的で紹介し、紹介料を受け取っていたことが弁護士法違反(非弁提携)にあたるとされたためです。紹介料は「賛助金」や「業務委託費」の名目で処理されていたとみられています。

モームリは現在も利用できますか?

利用できます。運営会社は2026年4月1日付で代表を交代し、同月23日に営業再開を発表しました。起訴されたのは紹介料の受領についてであり、サービス自体への司法判断が示されたわけではないと説明されています。

退職代行サービスを使うこと自体は違法なのですか?

退職代行サービス自体が一律に違法というわけではありません。本人の意思を会社に伝えるだけの「使者」としての行為であれば適法とされますが、有給消化や未払い残業代の交渉などに踏み込むと、非弁行為にあたる可能性があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました