夏休みの自由研究、全国コンクール「シゼコン」で評価される作品にはどんな共通点があるのか気になっていないだろうか。
結論から言えば、身近な疑問を出発点に、複数年かけて仮説と検証を積み重ねる姿勢が評価の核になっている。
シゼコンとは?第66回の応募規模と審査の視点
自由研究で「入賞」「特選」を目指すとき、まず知っておきたいのが自然科学観察コンクール、通称「シゼコン」の実態だ。
第66回では、小学校の部と中学校の部を合わせて応募校数400校、応募作品数はなんと6700点にのぼった。
これだけの数の作品の中から選ばれるのだから、入賞のハードルは決して低くない。
審査にあたった東京学芸大学名誉教授・小澤紀美子先生は、応募作品について「多様な視点から観察力を発揮している作品」「探究を楽しんでいる姿勢」「大学生を超える論文執筆能力にたけた作品」など、多彩な力を持つ児童・生徒が集まったと振り返っている。
つまり、入賞作品は一部の「天才児」だけのものではない。
テーマの見つけ方と深め方さえ押さえれば、誰にでもチャンスがある世界なのだ。
筆者としては、この「応募数の多さ」こそがまず読者に伝えたい第一の事実だと考える。
狭き門であることは事実だが、その分だけ選ばれた作品には再現性のある「勝ちパターン」が存在するはずだからだ。
第66回シゼコン、小学生の文部科学大臣賞はどんな研究だった?
具体的にどんなテーマが評価されているのか、第66回シゼコンの小学校の部から見ていこう。
文部科学大臣賞を受賞したのは、東京都荒川区立第四峡田小学校4年の佐藤大悟さんによる「エサ条件によるプラナリアの成長と自切に及ぼす影響」だ。
きっかけは、目の不自由な方との交流から生まれた「もし人間の目を再生できたら、多くの人を幸せにできるのではないか」という発想だったという。
佐藤さんは日本免疫学会主催の「免疫ふしぎ未来2024」に参加し、専門家の知見を自らの研究に取り込みながら実験を進めた。
冷凍豚レバーと冷凍赤虫という2種類のエサでプラナリアを飼育し、個体数の自切(体を切り離して再生する現象)の変化や体長の違いを観察した。
さらに次の段階では、RNA解析によって遺伝子の発現の違いまで調べるという、小学4年生とは思えない研究の深度に審査員一同が驚いたと記録されている。
専門コミュニティである学会に自ら足を運び、そこで得た知見を実験に落とし込んだ点は、単なる自由研究の枠を超えた本格的な取り組みだと筆者は感じている。

継続観察が評価される理由、他の小学生の入賞テーマから読み解く
佐藤さんのほかにも、第66回シゼコン小学校の部には注目すべき入賞テーマが並んでいる。
- 富山大学教育学部附属小学校4年・中山桃嘉さん「暑い夏を乗り切ろう!体のクールダウン大作戦!part2」:飲み物と体温の関係を120回超の検温データで検証
- 茨城県小美玉市立小川南小学校6年・内山旬人さん「キバネツノトンボの研究」:長期の継続観察が評価され、過去の同コンクールでも文部科学大臣賞を受賞
内山さんの研究が示すように、シゼコンでは単年の実験よりも継続観察に基づく研究が上位に食い込みやすい傾向が、複数年にわたって一貫していることが分かる。
中山さんの研究も「part2」と番号がついている通り、前年の疑問を翌年に持ち越して深めた形になっている。
一度きりの実験で終わらせず、「去年分からなかったことを今年確かめる」という発想そのものが、審査員に伝わる説得力を生んでいるのではないかと筆者は考えている。
シゼコンと地域の科学作品展、評価軸はどう違う?松阪市の事例から
全国規模のシゼコンだけでなく、地域の科学作品展でも「特選」「入選」の入賞は目指せる。
比較材料として、三重県松阪市が開催する「令和7年度松阪市児童生徒科学作品展」を見てみよう。
小学校272点、中学校40点、合計312点の応募のうち、最高評価の特選Aはわずか6点、特選50点、入選256点という構成だった。
特選Aに選ばれた小学校の作品を見ると、身近な生き物の観察をテーマにしたものが目立つ。
- 山室山小学校1年・木島央晴さん「アルテミアのかんさつ」
- 揥水小学校2年・近田直優さん「カエルの色のへんか2」
- 漕代小学校2年・諏訪時政さん「すずしくすごせるのはなに色?」:ペットボトルに色を塗って温度変化を調べる
- 中川小学校4年・藤田莉子さん:複数の場所の水を採取し、顕微鏡でプランクトンを観察・比較
応募312点に対して特選Aがわずか6点という数字は、地域展であっても「他の誰とも違う視点」を持つことがいかに重要かを物語っている。
ここで見えてくるのは、シゼコンのような全国規模のコンクールほど専門機関との接点や踏み込んだ分析が問われ、地域の作品展ほど身近な観察をどこまで丁寧に記録したかが問われるという評価軸の違いだ。
佐藤さんのプラナリア研究がRNA解析にまで踏み込んだのは、免疫学会という専門コミュニティとの接点があったからこそだと筆者は考える。
一方で松阪市の特選A作品は、ペットボトルの色と温度の関係や、身近な生き物の色の変化といった、専門機関に頼らずとも家庭内で完結できるテーマが並んでいる。
つまり「全国を狙うか、まずは地域で結果を出すか」によって、テーマの選び方そのものを変えるべきだというのが、両者を比較した筆者なりの分析だ。

4年連続受賞の望月さんに学ぶ、入賞する自由研究の三つのコツ
シゼコンとは別のコンクールにも触れておきたい。
「海とさかな」自由研究・作品コンクールで研究部門の最優秀賞を4年連続で受賞している、神奈川県鎌倉市立西鎌倉小学校5年の望月麻結香さんの事例だ。
望月さんが語る入賞のコツは大きく三つある。
- テーマは自分の身近なところに隠れている
- 実際に外へ出て調べると新しい発見に出会える
- 写真やグラフを使って見やすくまとめる
1年生のときに農林水産大臣賞を受賞した「お魚ソーセージのけんきゅう」は、冷蔵庫にあった魚肉ソーセージを見て「自分で作ってみたい」と思ったことがきっかけだった。
静岡県の牧場でソーセージ作りを学び、東京・築地市場に材料のタラのすり身を求めて出かけ、午前4時半から競りも見学したという行動力には驚かされる。
4年生の「シラス」研究では、生きたシラスを求めて水族館や漁協、愛媛県の水産総合研究センターまで足を運びながらも入手できず、発想を転換して湘南の飲食店や商店をめぐる「お店探検マップ」を完成させた。
さらに農林水産省の統計データから過去15年間の漁獲量を調べ、「シラスは年によって増減はあるが、減り続けているわけではない」という結論まで導いている。
両親は「子どもがつぶやく新たな疑問を聞き逃さないようにし、子どもが自ら話す感想や考えを粘り強く待つ」ことを心がけているという。
一から十まで手を貸すのではなく、待つ姿勢こそが、子どもの探究心を育てる土台になっているのだろう。
なぜその作品が評価される?審査員が見ているポイント
ここまで複数のコンクールの入賞作品を見てきたが、審査員が高く評価しているポイントには一定の傾向がある。
- 継続性:単発の実験で終わらせず、疑問から仮説、実験、検証というサイクルを複数年にわたって繰り返している
- 一次情報への行動力:専門家や現場への取材を通じて、研究の裏付けを厚くしている
- まとめ方の工夫:写真やグラフを効果的に使い、見やすく仕上げている
内山さんの継続観察や望月さんの4年連続受賞のように、前年の課題を次年度の実験で解決しようとする姿勢は、シゼコンの審査員コメントでも繰り返し評価されている。
佐藤さんが免疫学会のイベントに参加したように、また望月さんが牧場や市場、水産研究センターに足を運んだように、「自分で確かめに行く」行動が説得力を生んでいる。
写真やグラフを効果的に使い、実際に作った成果物を貼り付けた作品は、内容が優れているだけでなく「伝わりやすさ」でも評価を得やすい傾向がうかがえる。
考察:全国コンクールで評価される研究に共通する姿勢とは
ここからは筆者としての見解を述べたい。
今回、全国規模のシゼコンと地域の松阪市科学作品展、そして複数年型の「海とさかな」コンクールという性質の異なる賞を並べて見えてきたことがある。
それは、規模の大きい全国コンクールほど「専門領域への踏み込み方」が問われ、地域コンクールほど「日常の気づきをどこまで丁寧に記録したか」が問われる、という評価軸の違いだ。
近年は生成AIの普及で、情報を集めること自体は誰でも簡単にできる時代になった。
だからこそ、審査員が評価しているのは「情報の量」ではなく、「自分の手と足でどこまで確かめたか」という一次情報への姿勢ではないかと筆者は見ている。
築地市場に午前4時半に出向いた行動力、水族館や研究センターに直接足を運んだ粘り強さ、免疫学会という専門の場に踏み込んだ挑戦、こうしたエピソードはインターネット検索だけでは決して得られないものだ。
個人的には、シゼコンのような長い歴史を持つコンクールの審査コメントを継続的に追っていくと、「一度で完璧を目指す研究」よりも「一年ごとに疑問を更新していく研究」の方が評価されやすい傾向が年々はっきりしてきているように感じる。
今後の自由研究は、AIやデータ分析ツールを使いこなしながらも、最終的には「自分の目で見た事実」をどう積み上げるかという、極めて古典的で本質的な力が問われ続けるだろう。
まとめ
第66回シゼコンでは応募6700点の中から、荒川区立第四峡田小学校4年・佐藤大悟さんのプラナリア研究が文部科学大臣賞を受賞した。
継続観察や専門機関との接点、写真やグラフを使った見やすいまとめ方が、審査員の評価を引き上げる共通の要素として浮かび上がった。
一方で松阪市の科学作品展のように、専門機関に頼らず家庭内で完結できる身近なテーマから特選を目指す道もある。
- 身近な疑問を出発点にする
- 一度で終わらせず複数年かけて深める
- 自分の足で現場や専門家に確かめに行く
- 写真やグラフで見やすくまとめる
まずは子ども自身の「なぜだろう」という小さな疑問を、大人が急かさず粘り強く見守ることから始めてみてほしい。
よくある質問
シゼコンで入賞するにはどんなテーマが有利ですか?
特定のジャンルが有利というより、身近な疑問や好きなことを出発点にしたテーマの方が、継続的な観察や独自の切り口につながりやすい傾向がある。
入賞作品はどのくらいの期間で取り組んでいますか?
夏休みの約1カ月半で仕上げた作品もあれば、内山さんや望月さんのように複数年、あるいは4年連続にわたって継続している作品もあり、テーマによって幅がある。
全国コンクールと地域の科学作品展、どちらを目指すべきですか?
専門機関との接点を作りやすいテーマなら全国コンクール、家庭内で完結できる身近な観察テーマなら地域の作品展から挑戦するという選び方が一つの目安になる。


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