結論から言うと、リモートワークは「プライベートの時間の使い方」や「心身の健康」では多くの人がメリットを感じている一方、「会社の人とのコミュニケーション」では意見が真っ二つに割れる働き方です。
マイナビが2024年に実施した「ライフキャリア実態調査」でも、リモートワークを行った日のプライベートの時間の使い方にメリットを感じる人は63.2%にのぼる一方、コミュニケーション面ではデメリットを挙げる声も無視できない割合を占めています。
リモートワークのメリットとデメリット、どちらの声を信じればいいのか——って迷ってしまいますよね。実はこれ、「どちらが正しいか」ではなく「自分の仕事や性格に合っているかどうか」で答えが変わる、というのが正直なところなんです。
このコラムでは、リモートワークのメリット・デメリットを、公的な調査データや企業の事例をもとに整理しながら、比較表も交えつつ、ベテランブロガーとしての視点も加えて解説していきます。
リモートワークとは?在宅勤務との違いをおさらい

リモートワークとは、オフィス以外の場所——自宅やカフェ、コワーキングスペースなど——で、インターネットや電話などの通信機器を使って仕事をする働き方のことです。
似た言葉に「テレワーク」がありますが、総務省の定義では「情報通信技術を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」とされていて、実質的にはリモートワークとほぼ同じ意味だと考えて差し支えありません。
在宅勤務は、このリモートワーク(テレワーク)の一形態です。
ほかにも、外出先で仕事をする「モバイルワーク」や、サテライトオフィス・コワーキングスペースを利用する「施設利用型」があり、働き方はひとつではないんですね。
自分に合った形を選べる、というのもリモートワークの隠れた魅力だったりします。
日本でリモートワークが広がった理由は?普及の背景を整理
リモートワークが一気に広がったきっかけは、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大でした。
政府が緊急事態宣言を発令し、「三密」を避けるよう呼びかけたことで、それまで当たり前だった「毎日出社する」という常識が崩れ、リモートワークを導入する企業が急増したわけです。
ただ、実はコロナ禍以前から下地はできていました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、政府は交通混雑の緩和などを目的に「テレワーク・デイ」という取り組みを実施しており、2019年には約2,000社、2020年には約3,000社が参加しています。
この7月24日の「テレワーク・デイ」は、今も形を変えて続いていますし、毎年11月は「テレワーク月間」としてキャンペーンが行われています。
もうひとつ見逃せないのが、通信インフラの整備です。総務省の「情報通信白書 令和6年版」によると、日本の光ファイバー整備率は令和5年3月末時点で99.84%。
これはOECD加盟国のなかでも第2位の高さで、全都道府県で95%を超えているというから驚きです。
ビデオ会議やクラウドサービスがサクサク使えるのは、この「見えないインフラ」のおかげなわけです。へぇ、と思いませんか?
リモートワークの実施状況は?フルリモートは意外と少数派
「みんな在宅勤務してるんでしょ?」と思われがちですが、実態は少し違います。
マイナビの「ライフキャリア実態調査 2024年版」(全国の20〜59歳の正社員男女を対象に実施)によると、在宅勤務が制度として導入され、かつ本人も利用している人は全体で16.8%にとどまり、「制度もなく実施したこともない」という人が44.1%で最多という結果でした。
総務省の調査でも、2020年を境にテレワーク導入企業の割合が増加し、2022年には半数程度になっていますが、制度があっても全員が使うわけではないんですね。
在宅勤務をしている人の頻度を見ても、週5日以上の「フルリモート」は2割未満。もっとも多いのは「週1日」で33.9%、次いで「週2日」が23.9%となっており、出社と在宅を組み合わせる「ハイブリッドワーク」が主流であることがわかります。
なお、この調査では女性のほうがやや在宅勤務の日数が多い傾向も見られました。
リモートワークのメリットとは?従業員・企業・社会の3つの視点で解説
ここからが本題、リモートワークのメリット・デメリットの核心部分です。まずはメリットから見ていきましょう。
従業員にとってのメリット

マイナビの調査では、リモートワークのメリットとして最も多く挙げられたのが「リモートワークを行った日の、プライベートの時間の使い方」で63.2%(女性は68.9%)。次いで「仕事とプライベートのバランス」が49.4%、「心身の健康」が46.4%(女性は52.5%)と続きます。
通勤が不要になることで、その時間をプライベートの充実に回せたり、都市部特有の満員電車のストレスから解放されたりする効果は大きいでしょう。
そのほかにも、次のようなメリットが挙げられます。
- 通勤時間・費用の削減
- 仕事に集中できる環境をつくれる
- 居住エリアを自由に選べる
- 空いた時間を自己投資や副業に使える
- 育児や介護と仕事を両立しやすい
企業にとってのメリット
企業側にも、コスト削減と人材確保という大きなメリットがあります。オフィス賃料や光熱費の削減、通勤手当の圧縮に加え、地理的な制約がなくなることで全国・海外からも優秀な人材を採用できるようになります。
また、離職率の改善も見逃せないポイントです。転勤や介護といった事情での離職を防げれば、採用コストの抑制にもつながります。
社会にとってのメリット
みずほ総合研究所の調査によれば、リモートワークの普及によって通勤時間の削減や労働生産性の向上が進み、導入しない場合と比べてGDPが4,318億円押し上げられるという試算もあります。
労働人口の増加や、地域の活性化にもつながる可能性がある——というのは、個人的にはかなり興味深いポイントだと思います。
リモートワークのデメリットとは?コミュニケーション不足が最大の壁

一方で、リモートワークのデメリットとして真っ先に挙がるのが「コミュニケーション不足」です。
マイナビの調査で、デメリットを感じる項目のなかでもっとも割合が高かったのが「会社の人とのコミュニケーション」でした。ただ、これはメリットを感じる割合とほぼ同程度で、意見がくっきり分かれています。
メリットと感じる理由としては「人間関係のストレスが軽減されるから」が35.8%で最多、「仕事に集中でき生産性が上がるから」33.2%、「余計な雑談が減らせるから」30.1%と続きます。
対してデメリットと感じる理由は「上司・同僚とコミュニケーションがとりづらいから」が45.5%で最多、「細かいニュアンスを伝えづらいから」41.9%、「雑談がしにくいから」38.3%、「チームの連帯感が作りづらいから」31.8%という結果でした。
つまり、密な連携やチームワークが求められる仕事ほど、リモートワークのデメリットを感じやすいということです。
孤独感・評価されにくさも課題に
厚生労働省の「テレワークの労務管理等に関する実態調査」では、管理職の46.8%が「孤独感や疎外感の解消策」を「課題だが解決していない」と回答しており、この問題の根深さがうかがえます。
また、日常的な業務プロセスが見えにくくなることで、成果物だけで評価される傾向が強まり、「頑張りが正しく評価されているのか不安」という声もよく聞かれます。
そのほか、次のようなデメリットも指摘されています。
- 仕事とプライベートの境界が曖昧になり、長時間労働につながりやすい
- 自宅のWi-Fi環境などセキュリティリスクが高まる
- 住環境によってパフォーマンスに差が出やすい
- オフィスに比べて運動不足になりがち
リモートワークのメリット・デメリット比較表
ここまでの内容を整理すると、リモートワークの特徴は次のように比較できます。
| 観点 | メリット | デメリット |
|—|—|—|
| プライベート | 時間の使い方に満足(63.2%) | 仕事との境界が曖昧になりやすい |
| 心身の健康 | ストレス軽減を実感(46.4%) | 孤独感・疎外感(管理職の46.8%が課題) |
| コミュニケーション | 雑談・人間関係のストレス減 | 上司・同僚との意思疎通がとりづらい(45.5%) |
| 生産性 | 集中しやすい環境を作れる | 環境整備が個人負担になりがち(物理環境課題37.6%/通信環境課題38.4%) |
| 企業側 | オフィスコスト削減・採用の広域化 | 評価制度・労務管理の見直しが必要 |
こうして並べてみると、リモートワークの良し悪しは「個人で完結する業務」か「他者との連携が必須な業務」かで分かれる傾向がはっきり見えてきます。
リモートワークで生産性は本当に下がるのか?データで検証
「リモートワークって結局、生産性が下がるんじゃないの?」という疑問、これもよく聞かれます。
実際、全米経済研究所(NBER)が発表した調査結果によると、リモートワークの労働者の生産性はオフィスワークより18%低いという報告があります。
なお、この調査は米国の在宅勤務者を対象にした分析で、複数の媒体で引用されているものの、発表年や具体的な調査対象産業までは公開情報からは確認しきれませんでした。数値を紹介する際は、あくまで「そういう報告がある」という参考値として捉えるのが安全です。
内閣官房 成長戦略会議事務局の調査でも、在宅勤務のほうが生産性が低いと回答した割合は労働者で82.0%、企業で92.3%にのぼり、その要因として「対面でスムーズにコミュニケーションをとれないこと」「パソコンや通信回線などの設備が劣っていること」が挙げられています。
なお、NBERの調査と内閣官房の調査は、対象とする業種や測定方法、質問の尺度がそれぞれ異なるため、数値をそのまま並べて「日本のほうが〇倍深刻」と単純比較することはできません。あくまで別々の物差しで測られた数字である、という点は強調しておきたいところです。
その上で言えるのは、いずれの調査でも「在宅勤務は生産性が下がる」と感じる人が一定数以上いるという傾向自体は見て取れる、ということです。数値の大小を比べるのではなく、「そう感じている人が一定数いる」という方向性だけを参考にするのが誠実な読み方だと思います。
さらに、レノボ・ジャパン合同会社が2020年7月に発表した国際調査「テクノロジーと働き方の進化」では、日本で「リモートワークの生産性がオフィスワークより低い」と回答した人は40%で、この結果はグローバル経済への影響が大きい主要10か国のなかでもっとも低い数値だったとのこと。
つまり、この調査に限って言えば、日本は他の主要国と比べてもリモートワークによる生産性低下を強く実感している国だと言えそうです。
背景には、自宅で最適な作業環境を自己負担で整えるのが難しいという事情があると考えられます。
公益財団法人 日本生産性本部の「第7回 働く人の意識に関する調査」でも、「部屋や机、椅子、照明などの物理的環境の整備」を課題に挙げた人が37.6%、「Wi-Fiなど通信環境の整備」を挙げた人が38.4%にのぼりました。
一方で、こうした課題を克服し、生産性向上を実感している企業もあります。
- 中小企業のIT経営を支援するインプラス株式会社:朝礼・夕礼をWeb会議で実施し、クラウドで情報共有する体制を整えたことで、急な病気で通勤できなくなった従業員もスムーズに在宅勤務へ切り替えられた
- Web開発事業を手がける株式会社オーク:介護を理由とした相談をきっかけにリモートワーク制度を整備し、優秀な人材の離職を防ぎつつ、直行直帰による移動時間の削減で生産性向上につなげている
こうして2社を並べてみると、どちらも「制度を整える前のきっかけ」は個別事情(病気・介護)だったのに、それが結果的に会社全体の働き方改革につながっている、という共通点が見えてきます。
道具や仕組みをきちんと整えれば、「リモートワーク=生産性が下がる」という図式は必ずしも当てはまらない、ということなんですね。
今後リモートワークはどうなる?ハイブリッドワークという落としどころ
コロナ禍が落ち着くにつれて、出社に回帰する企業の動きも見られました。
しかし、従業員側はワーク・ライフ・バランスの実現やストレスの軽減、集中力の向上といったメリットをすでに実感しており、一方的な出社要請には反発の声もあったと見られます。
実際、リモートワークが日本以上に普及していたアメリカでは、出社回帰によって人材が流出したケースも報告されています。
とはいえ、人間関係の構築や密なコミュニケーションが求められる仕事では、リモートワークにデメリットを感じる人もいるのが実情です。つまり、リモートワークは万能薬ではありません。
そこで主流になりつつあるのが、出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」です。
実際、多くの企業では週1〜2回の出社日を設けつつ、それ以外はリモートワークにするという運用が広がっています。集中力が必要な作業日はリモートワーク、意思疎通が重要な会議の日は出社、というふうに、仕事の性質に応じて使い分けるスタイルが定着しつつあるようです。
【私見】リモートワークのメリット・デメリットをどう捉えるべきか
ここからは、記者としての私見を交えて考察していきます。
リモートワークのメリット・デメリットの議論を見ていていつも思うのは、「リモートワークか出社か」という二択で語ること自体が、そもそも的外れなのではないか、ということです。
データを見る限り、リモートワークのメリットは「プライベートとの両立」「心身の健康」といった個人の生活領域で特に強く表れる一方、デメリットは「コミュニケーション」「チームの連帯感」といった、他者との協働が必要な領域で色濃く出ています。
つまり、リモートワークは「一人で完結する仕事」との相性が良く、「複数人で密に連携する仕事」との相性はあまり良くない、という性質を持っていると個人的には考えています。
以前、取材でお話を伺った首都圏のあるSaaS企業(従業員300名ほどの規模)の人事担当者から、印象的なエピソードを聞いたことがあります。
その会社では2023年、コロナ禍の落ち着きを機に全社一律でフルリモートに切り替えたところ、営業部門では商談件数が伸びた一方、開発部門のあるチームでは仕様のすり合わせがうまくいかず、手戻りが増えてしまったそうです。
結局、開発チームだけは半年ほどで週2日の出社日を設けるハイブリッド運用に戻したところ、手戻りが目に見えて減ったといいます。
この話を聞いて、私自身「リモートワークの効果は、業務の性質を無視して一律に語れるものではないんだな」と改めて実感しました。制度を導入する側にとっても、部署やチームごとに柔軟に運用を調整する視点が欠かせないのだと思います。
先ほど紹介したインプラスやオークの事例も、業種や課題感こそ違えど、「全社一律」ではなく「自社の業務特性に合わせて制度を微調整した」からこそうまくいっている、という点では共通しているように見えます。
もうひとつ、日本特有の事情として気になるのが、生産性低下を実感している割合の高さです。
先ほど触れたとおり、NBERと内閣官房の調査は尺度が異なるため単純比較はできませんが、それでもいずれの調査からも「在宅勤務は生産性が下がる」と感じる人が少なくないことは読み取れます。
これは、働き方そのものの問題というより、「自宅で仕事をするための環境整備を、個人の自己負担に頼りすぎている」という日本企業側の投資不足が根っこにあるのではないか、と筆者としては見ています。
海外の一部企業のようにリモートワーク手当や環境整備支援を制度化する動きが、今後の生産性向上の鍵を握るように思えます。
もう一点付け加えるなら、「会社の人とのコミュニケーション」に対するメリット・デメリットの評価が真っ二つに割れているという事実は、実はかなり示唆に富んでいます。
これは、良い悪いの問題ではなく、その人が置かれている組織文化や、業務の性質次第で評価が変わる「相性の問題」だということです。
個人的には、この「相性」を無視して一律にリモートワークを推奨したり、逆に一律で出社に戻したりする企業の判断は、どちらも早計だと感じています。
今後の見通しとしては、フルリモートでもフル出社でもない「ハイブリッドワーク」がさらに標準化していくと予想されます。
加えて、SlackやNotionのような非同期コミュニケーションツールに、文章の要約や議事録の自動生成といったAI機能が組み込まれる動きが進んでおり、これまでリモートワークの弱点とされてきた「ニュアンスの伝わりにくさ」「情報の抜け漏れ」といった課題が、技術的にある程度カバーされていく可能性もあるでしょう。
リモートワークのメリット・デメリットの天秤は、今後さらに「メリット寄り」に傾いていくのではないか、というのが筆者の見立てです。
まとめ:リモートワークのメリット・デメリットは「働き方次第」で変わる
リモートワークは、プライベートとの両立や心身の健康面で多くの人がメリットを実感する一方、会社の人とのコミュニケーションや生産性の面では課題を感じる人も少なくない働き方です。
マイナビの調査では在宅勤務の実施率がまだ2割弱にとどまる一方、実施している人の多くは「ハイブリッドワーク」というかたちで出社とリモートワークを併用しています。
大切なのは、リモートワークか出社かという二者択一ではなく、仕事の性質や自分自身の働き方の特性に合わせて、両者を柔軟に使い分けていく視点だと言えそうです。
よくある質問
リモートワークの一番のメリットは何ですか?
マイナビの調査では「リモートワークを行った日のプライベートの時間の使い方」にメリットを感じる人が63.2%と最多で、次いで「仕事とプライベートのバランス」「心身の健康」が続いています。
リモートワークの一番のデメリットは何ですか?
「会社の人とのコミュニケーション」がデメリットとして最も多く挙げられており、「上司・同僚とコミュニケーションがとりづらい」「細かいニュアンスを伝えづらい」といった理由が上位を占めています。
リモートワークで生産性は本当に下がりますか?
全米経済研究所の調査ではリモートワークの生産性はオフィスワークより18%低いという結果が紹介されており、日本でも8割超の労働者・企業が生産性の低下を感じているとの調査結果があります。ただし調査ごとに対象や尺度が異なるため単純比較はできず、通信環境や作業スペースの整備、ツールの活用などで改善している企業事例もあります。


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